80.禁断の手法
料理番組には「あらかじめ」が多い。
「これをキツネ色になるまで、じっくり炒めるんですが、あらかじめ炒めておいたものがここにあります」
と言ってキツネ色になったものを見せる。
あるいは、
「これをトロ火で3時間ほど煮込み、時々灰汁をとるのですが、そうやってあらかじめ煮込んでおいたものがこれです」
と言って自慢気にそれを見せる。
それは確かに、番組には時間の制約がある。手間暇のかかる部分を全部見せているわけにはいかない。「キュ○ピ○3分クッキング」は、ちゃんとやると3分ではできないのだ。そのために編み出された「あらかじめ手法」であろう。が、なぜ料理番組にだけそれが許されるのか?
こんな便利なもの、ぜひ他の番組でも使わせてもらいたいではないか!
バラエティ番組だと、
「ここでとんでもないアクシデントがあって大爆笑となるのですが、あらかじめ大爆笑したものがこれです」
ドラマだと、
「ここで犯人と刑事が大立ち回りをして、撃たれてを傷を負った刑事が見事犯人を捕まえるのですが、そうやってあらかじめ捕まえておいた犯人がこれです」
実に便利である。
いっそのこと、料理番組でもさらにこの手法を推し進めて、
「ここに材料があります。これを刻んで味付けして、炒めて、隠し味をいれて、煮込んで、盛り付けるのですが、あらかじめ盛り付けたものがここにあります」
とやってみてはどうだろうか?
【今週のモンダイ点】
◎すべての番組が「3分ドラマ」「3分クイズ」……になってしまいそうだが。
(ステラ/1999/10/28)
お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。