88.大流行?

 一時的に急速な勢いでその社会に広まる言葉--―と辞書にはある。「流行語」のことだ。広まりましたかね、ブッチホンって?
 今年の新語・流行語大賞に「リベンジ」「雑草魂」「ブッチホン」の三つが選ばれたと、あちこちのニュースで取り上げていた。ていうことはですよ、今年はみんながこの言葉を使っていたのか?
 サラリーマンは会社で、
「まさか社長から直々に電話があるとは思わなかったよ。もう、まるでブッチホン」
 コギャルは渋谷で、
「超ブッチホン系、みたいな?」
 主婦たちはスーパーで買物しながら、
「今晩の夕食何にしようかしらブッチホン」
「野菜がブッチで、お魚もホンだから」
「やだぁ、それってブッチホン……」
 ……と用法すらわからなくなるほど、この言葉には馴染みがない。
 たいていの人々がそう思っているだろう。なのにこの言葉が選ばれてしまうというのは、おそらく選考にあたった識者のみなさんに、
《政治的なことは他のジャンルより偉い》
 という政治至上主義があるからだ。

 しかし、考えてみればこれは一企業が選んだ一つのランキングにすぎないのですね。なにもみんながこれに従う必要はない。
 かつて「レコード大賞」というのがそうだった。あれもTBSという一放送局がやっているランキングにすぎない。そこに不満を持ったテレビ各局がそれぞれさまざまな賞を創設し、年末の賞取りレースが賑やかになって楽しかったではないか。
 同様に、これからは「あなたが選ぶ流行語大賞」とか「流行語・金の鳩賞」とか、色々出てくると楽しいのだが。

【モンダイ点】
◎ひょっとして知らないのはぼく一人で、世の中みんなが日常的に「ブッチホン」を使ってたらどうしよう……。

(ステラ/1999/12/23)

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