86.演歌リストラ

 語順が反対じゃないのか?
 最初にそう思った。「演歌リストラ」という言葉を聞いた時である。
 ここんところ演歌のCDが売れないという話は聞いていた。そこへもってきてこの不景気、リストラブームである。
 企画モノ演歌を三曲ばかり作詞しているぼくとしては、ピンと来ましたね。
「はは~ん。この世相で辛い境遇のお父さんたちの恨みつらみを晴らす企画モノ『リストラ演歌』というのを出すんだな。忘年会シーズン狙いで。やられた!」
 しかしこの未曾有の不景気で、音楽業界はぼくみたいに脳天気ではなかった。実際は、名だたる演歌歌手たちが所属レコード会社(もう「レコード」なんか作ってないのだが)から、リストラを告げられたということ。語順は間違ってなく、「演歌リストラ」でよかったのだ。

 余波を受けて、演歌ではないがJ‐POPやロックでもないというベテラン歌手たちも、所属レコード会社との契約がなくなるケースが増えている。
 先日、そういったフォーク第一世代のアーチストのプロデューサーと話をしたが、「今後、レコード会社の重要性は低くなる」と、あまり心配はしていなかった。インターネットで、個人が直接、好きな音楽を手に入れることが可能になるからだ。デジタルだとそういうことができる。
 もはやレコード会社に属さなくてもいい。極端に言えばCDを作らなくてもいい。アーチストが、自分の作った音楽のデータだけを直接インターネットで売ればいいのだ。これからは、そういう「音楽産直時代」になるのかもしれない。

【モンダイ点】
◎ただし、演歌を聞く人たちがインターネットを使えるかどうか……。

(ステラ/1999/12/9)


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