85.誰のもの?

「ラジオは作家のもの、テレビはディレクターのもの、舞台は役者のもの」――という言葉がある。

 ラジオは、役者であれ、パーソナリティーであれ、お笑いタレントであれ、台本を見ながら喋っていても聞いている人にはわからない(「まさか?」と思うような番組にも、実はちゃんと作家がついているのです)。その分、台本に頼る率が高くなり、台本から逸脱することも少ない。
 それで、ラジオの場合は作家の趣味が表に出るということ。
 テレビのVTR収録では、膨大に収録したテープをディレクターが編集しまくる。その編集によってシーンの順序を入れ替えてまったく違う内容にすることもできるし、人物一人を消してしまうことだってできる(かつて関わった番組で、二人いたゲストを編集で一人にしてしまったこともある)。
 それで、テレビの場合はディレクターの趣味が表に出るということ。
 舞台は、いったんお客さんの前に出てしまったらもうやり直しがきかない。セリフを間違えようが、ディレクターの意図と違うことをやろうが誰も止められない。すべて出演者の思うがまま。
 それで、舞台の場合は役者の趣味が表に出るということ……なのだ。

 ところでぼくは、すべてのジャンルに作家として関わっているが「あそこ、よかったねぇ」と褒められた部分は、たとえ自分が書いてなくても「そうだろ? エッヘン」とイバることにしている。つまり、
「ラジオもテレビも舞台も、いい所はすべて作家のもの」――なのだけどね。

【モンダイ点】
◎もちろん「ラジオもテレビも舞台も、悪い所はすべてディレクターか役者のもの」――でもある。

(ステラ/1999/12/2)

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