78.いかがわしい行為

 最近、まさかと思うような職業の人が犯罪をはたらいてニュースになっている。
 そんな事件を報道する時、アナウンサーは、
「いかがわしい行為をはたらいた」
 などと言う。
 これを聞くとぼくはいつも、「いかがわしい行為って何だ?」と非常に気になってしまうのだ。  

 手元の国語辞典で「いかがわしい」を引くと、①そのまま信用できるかどうか疑わしい。②おおっぴらに認められない内容。……とある。たぶんこの②の方なんだろう。
 非常に抽象的な表現である。直接その行為を表現すると人前をはばかる言葉だから、わざとあいまいにしているのだろうが。
 しかし、ぼくなんか品性が卑しいのか、どんな風にいかがわしいのか、ああだろうかこうだろうか、と余計に考えが広がってしまうのだ。揚げ句に、たぶん実際の行為よりも三倍くらい「いかがわしい」ことを想像してしまい、「ええっ? そ、そんなことまで!」と勝手に顔を赤くし、フンガイしてしまうこともある(こういうのは想像とは呼ばない。妄想と呼ぶ)。 

 同じような表現に、
「親密な交際を迫った」
 というのもある。
 これまた、どのくらい親密なのか? どこからが親密なのか? と考え出すと止まらない。
 あぁ、
「イタズラをはたらいた」
 という表現が、ドアの上に黒板消しを置いて「やーい。ひっかかったぁ!」とはやし立てるのとは違う種類のイタズラだと知ったのは、いつの頃だったろうか……。 

 この言い回し感覚は、時代劇で「かどわかす」とか「ねんごろになる」と言うのと似ている。時代劇もニュースも若者に敬遠される理由は、ここに共通しているのか。 

【モンダイ点】
◎とは言え、ニュースで「ラブラブになる」なんて言い方はできないしなぁ。

(ステラ/1999/10/14)

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