81.毒見大臣

 茨城・東海村の臨界事故には、日本中が大パニックにおちいった。ぼくはあの夜、NHKFMで情報を聞いていたのだが、おだやかなラジオ深夜便の合間に、
「陸上自衛隊の出動を要請しました。が、自衛隊は現場付近まで行ったところ、中性子がひどいので近付くことができず、現在手前で待機しています」
 というニュースが流れる。
 こういったものものしいニュースというのは、ドラマや映画の「怪獣が出現しました!」というような場面でしか見たことがない。不謹慎とは思いつつ、そんなシーンを思い出してしまった。
 事故が一段落すると「茨城の農海産物は安全ですよ」というアピールのために、小渕首相が現地産のメロンやら戻りカツオやらを食べるシーンが、やたらとニュースで流れていた。
 こういうのは前にも見たことがある。 

 O‐157騒動の時、たしか当時の菅大臣が、カイワレダイコンをむしゃむしゃ食べるパフォーマンスをしていた。所沢のダイオキシン騒動の時も、小渕首相が地元産のホウレンソウをわしゃわしゃ食べていた。
 はたしてどれほどの効果があるかは知らないが、地元生産者としてはぜひともやってもらいたいことだろう。

 世の中では土壌汚染、農薬被害、環境破壊……などなどが進んでいる。こと食品に限って言えば、今後またなんらかの事件がおき、それによって迷惑をこうむる生産者が現れることは十分考えられる。
 その度に首相に頼むのも心苦しい。いっそのこと、今度の省庁再編案に「毒味大臣」というのを入れておいてはどうだ。 

【今週のモンダイ点】
◎たとえそうやっても、やはり小渕首相はホイホイ出てきそうな気がする。

(ステラ/1999/11/4)

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