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劇評

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主に石川県金沢市での、演劇・ダンスの観劇記録です。
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#朗読

(感想)みえないものをたちあげる

(感想)みえないものをたちあげる

(以下、筆者Xより転記)

チロルマーケットによる、金沢海みらい図書館朗読会『みえるとか見えないとか』観賞(でいいのかな。拝聴?)。死と近づいた人々の物語が5編、朗読された。原作は阿刀田高、唯川恵、浅田次郎、江國香織、萩原浩。聴くだけで想像する朗読だからこそ、このテーマが合っているように思えた。

朗読にもいろいろなスタイルがあるのだろうと思うが、私には演劇的演出がなされた作品が、情景をイメージし

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(劇評)人の思いの底知れ無さ

(劇評)人の思いの底知れ無さ

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」プロゲキ!8・27『怪談』の劇評です。
2023年8月27日(日)17:00 DOUBLE金沢

2023年4月から隔月で上演を始め、今回で3回目となる「プロゲキ!」である。「もう3回?」と驚く。だが、「まだ3回」でもあるだろう。「プロゲキ!」は演劇初心者でも観やすい、30分程度の短編劇を複数作上演する、というコンセプトの元に開催されている

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(劇評)内輪から一歩はみ出して

(劇評)内輪から一歩はみ出して

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」第一回公演『井口時次郎の場合、』の劇評です。
2023年4月16日(日)14:00 DOBLE金沢

劇団ドリームチョップ「プロゲキ!ドリームチョップLIVE」(以下「プロゲキ!」)のプレ公演を鑑賞して、「プロゲキ!」に賭ける井口時次郎の思いについて、先に書いた。

劇団の稽古場でのプレ公演を経て、音響(長山裕紀)や照明(林怜奈)、映像(高

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(劇評)「ぼく」を問う

(劇評)「ぼく」を問う

書彩 vol.9『ぼくになることを』の劇評です。
2019年7月14日(日)17:00 スタジオ犀

 ぼくの頭の中には「宝石」がいて、ぼくになることを学んでいる。ぼくがぼくでいられなくなった時に、かわりにぼくになれるように。グレッグ・イーガンの『ぼくになることを』は、このような説明で始まる。書彩 vol.9はこの作品のリーディング公演である。
 正面、上手、下手の三方を黒い幕に覆われた劇場。床に

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(劇評)幻想より出でしもの

(劇評)幻想より出でしもの

エイチエムピー・シアターカンパニー「金沢ナイトミュージアム BUNGAKU Night 泉鏡花 『高野聖』」の劇評です。
2018年8月11日(土)19:00 泉鏡花記念館

 拍子木の音に合わせて演者が動き、止まる。コマ送りのようなその動きの中、止まった時の表情を、体つきを、こちらを凝視する目を、直視してもいいものかと思えてしまう。

 エイチエムピー・シアターカンパニーによる『高野聖』が、作者

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(劇評) 境界に在るもの

エイチエムピー・シアターカンパニー 鏡花の夕べ『高野聖』の劇評です。
2017年10月7日(土)19:00 中村記念美術館

 金沢市立中村記念美術館の、茶室に面した庭園にて、エイチエムピー・シアターカンパニーによる鏡花の夕べ『高野聖』は上演された。構成・演出は笠井友仁、語りは高安美帆、出演は森田祐利栄、澤田誠、原由恵である。

 庭園に出た所、建物の軒先に客席、客席に近い上手に語りの高安が座る。

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