【1989年100日旅】27日目。モスクワ
1989年5月2日。旅は27日目。バレエを見に母と二人でボリショイ劇場へ。劇場はロビーから華やいでいた。正装の人々。濃厚な香水の香り。ささやき声。場内のシャンデリアはキラキラ輝く。道も建物もだだっ広く埃っぽいモスクワにあって、劇場は全員の意識が一点に集中する、煌めく別世界だった。
この日の演目は「くるみ割り人形」。マリー役のダンサーのジャンプの高さ、重さを感じさせない着地。群舞も楽しく、一瞬も飽きずに見入った。「『ガイーヌ』の人には悪いけれど、『くるみ割り人形』の方がおもし