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【1989年100日旅】42日目。モスクワ

1989年5月17日、42日目。父の知人の在露日本大使館の方々と夕食。宮殿のような店でロシア料理を。「キエフ」という料理がおいしいよと勧められたのでそれにする。出てきたのはこんがり揚げられたまんまるいフライ。コロッとしていて、うっかりしたらナイフが滑ってフライが飛んでいってしまいそう。どこから切ればいいかと迷っていると隣に座ったお兄さんが切ってくれた。

キエフは、切ると中からとろーっと熱いバターソースが溢れ出す。ソースのハーブが香り、カリカリの衣、鶏胸肉のしっかりした歯ごたえ、力強い味があわさって非常においしい。私は食の細い子どもだったけれど、夢中で食べた。

外交官の方々は気さくで、子どもを楽しませようと、わかりやすいネタを話したり、「四角い眼鏡のお兄さん」と私たち子供に呼ばれた人が、おどけて別の人の眼鏡と交換したり。誰かに後をつけられた話やKGBにカメラを没収された話はスパイ映画のようだった。黒塗りのピカピカの車で、オレンジ色の街灯が照らす大通りをとって帰った。

ちなみに。キエフというのは現ウクライナの首都名。関東の人が「北海道産チーズ」と聞くとよりおいしそうに感じるのと同様に、ロシア人にとってウクライナはおいしいものの宝庫みたいなイメージがあるんだとか。

そんな感じの42日目。旅は残り58日。

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