図1

本の内容は矛盾していい

このあいだ、こちらの会合に出席した。

参加者は実用書とかのライターさんがおおく、そうするとしぜんと「ライターあるある話」になっていく。
編集者とライターというのはクライアントとサプライヤーの関係なので、ライターさんのぶっちゃけ話を編集者であるわたしがきける機会はすくなく、貴重な体験だった。


取材のやりかたとか文章の書きかたとかいろいろなはなしが出てたのしかったけど、わたしがいちばん印象に残ったのは「著者のはなしに矛盾があったとき、どのくらい整合性をとるべきか?」という問いだった。

本の中で矛盾があってもいい

わたしもまえの会社で雑誌やムックのライティングをやっていて、著名人に取材して文章にまとめることをやってたからわかるけど、たしかに彼らのはなしをきいてると、最初のほうと最後のほうで、主張に矛盾や整合性のとれない内容がはいってくるのだ。
(原稿をかきはじめてから矛盾にきづくこともおおい)

結論から言ってしまうと、その場では「あんまり気にしなくて良いんじゃないか」ということになった。

なんでかというと、あまりにも一冊の本のなかでのリクツの整合性を気にしすぎると、おもしろくなくなることがおおいからだ。

でも前提条件はあると思う

わたしたちは実用書をつくってるのであって、論文や学術書をつくってるわけじゃない。内容はただしいけどつまらなくて最後まで読みきってもらえない本より、ちょっと内容の整合性がとれない部分もあるけど、おもしろくて読むのがとまらなくなる本をつくりたい。

ただし、矛盾があってもいいのは前提条件があるとおもう。

それは、ライターや編集者がその矛盾にきづいていることだ。矛盾があるのにきづかず、読者の指摘ではじめて気づくのは、それはそれでプロとしてどうなんだろう。

「タイトル詐欺」といわれないために

これはタイトルをつけるときにもいえる。

できるだけおおくのひとの興味をいだくように、あえて著者がほんとうに主張したいことからすこし外したタイトルをつけるのは戦略的にまちがってない。

でも、それも「あえて狙って」という意図がなければ、ほんとうに的はずれで、読んだあとに「タイトル詐欺」とおもわれる本になってしまう。

本のないようを真正面から表現したタイトルはおもしろくないけど、ねらいすぎると反感をかう。

そこらへんのバランスは本のジャンル(というよりメイン読者層)によって変わるけど、どちらにしても、そのタイトルと内容で読者がどのようにかんじるかをつくり手が予想できていないのはやっぱりよくない。


企画とは、「たくらむ」ことだ。たくらむというのは、「おそらくこうなるだろう」という見立てをもつことにほかならない。

(了)



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