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掌編小説

25
140字から始まる超短編小説です
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#SF

タイムマシンに乗って【短編】

タイムマシンに乗って【短編】

──タイムマシンがあったら何をしますか?

突然話しかけてきた男がいた。戦後の闇市で芋を買う金もなくさまよっていた時。
懐のにぎりめしを半分に割って、俺にくれた。
路肩にしゃがんでむさぼり食った。3日ぶりの飯が腹にしみた。

──私は、先祖達のプロポーズをぜんぶ見たい。お見合いや、結婚式でもいい。
通りすがりの人として、おめでとうと言いたい。

男がなにを言ってるのか分からなかった。
家族はみんな

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星を語るピアノ【短編】

星を語るピアノ【短編】

宇宙船がその星に降りたとき、生体反応は1人だけだった。

「あなただけですか?」
船員は相手にたずねた。

数日間観察した結果、わかったこと。
このヒューマノイド型の女性が、ピアノを弾き続けていたという事実だ。食事をとるときと寝るとき以外、ずっと。

「そうです」
女性はうなずき、指を鍵盤に置いた。口はほとんど動かない。テレパシーだろうか。
「私で最後です。もう650年生きました。そろそろ寿命が尽

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