見出し画像

「稚拙で猥雑な本能寺の変」12

●第6幕
○シーン12 秀吉の館・監禁部屋

しずとたねが捕えられている。

しず  「・・・」
たね  「・・・姉ちゃん」
しず  「ん?」
たね  「また戦になっちゃったのかな」
しず  「え?」
たね  「戦になったからたねたちは捕まったんじゃないか?」
しず  「うーん。でも戦だったら捕まる前に殺されちゃうんじゃないかな」
たね  「そうか。殺されなくて良かった」
しず  「そうだな」
たね  「・・・織部、弱かったな」
しず  「弱かったな」
たね  「でもたねたちを守ろうとしてくれた」
しず  「うん」
たね  「織部は弱いけどいい人だな」
しず  「うん・・・」
たね  「強かったらもっといいけどな」
しず  「そうだな」
たね  「姉ちゃん」
しず  「ん?」
たね  「・・・」
しず  「兄ちゃんは今ごろ私たちを探してくれてるんだろうな」
たね  「たねのこと嫌いなのに?」
しず  「織部も言ってただろ、好きだけど嫌いって言うこともあるんだって」
たね  「そうだといいな」
しず  「そうに決まってる。元気出そう!」
たね  「うん・・・姉ちゃん、腹へった」
しず  「そうだな」
たね  「うん・・・」

上手上段から登場する、秀吉、久作。
久作はお盆に入った握り飯を持っている。

久作  「こちらでございます」

監禁部屋に入ってくる。

秀吉  「よく来てくださった」
しず  「誰だ?何で私たちを捕まえた?」
秀吉  「まあまあ。二人とも腹減ってるんじゃないか?」
たね  「握り飯だ!」
秀吉  「食べたい?」
たね  「うん」
秀吉  「そうか。じゃあお嬢ちゃんのお名前を教えてくれるかな?」
たね  「たねだ!」
秀吉  「お嬢ちゃんは?」
しず  「・・・明日香」
秀吉  「おかしいなあ。しずって子がいるはずなんだけど」
しず  「しずなんて知らない」
秀吉  「ウソ」
しず  「ウソなんてついてない。明日香とたねだ」
秀吉  「久作、どうなってる?」
久作  「この二人は平太という百姓の妹。どちらかが間違いなく」
秀吉  「本当のことを言わないと握り飯はあげられないなあ」
たね  「しずなんて知らない!」
秀吉  「本当に?(握り飯で誘惑する)」
たね  「本当だ・・・しずなんて・・・しずなんて・・・(明らかに誘惑に乗って)」
しず  「たね・・・私だ。私がしずだ」
たね  「姉ちゃん」
秀吉  「そうかお嬢ちゃんがしずか。いい子だね」
しず  「握り飯をくれ」
秀吉  「だめ」
たね  「なんでだよ。くれよ」
久作  「秀吉様」
秀吉  「何だ」
しず  「!」
久作  「この娘(たね)はいかがいたしましょう」
秀吉  「人質にしとけ」
久作  「はっ」
秀吉  「フロイスは?」
久作  「ぬかりありません」
たね  「なあ、握り飯くれよ!」
秀吉  「だめだ」
たね  「ケチ!ウソツキ!ジジザル!」
秀吉  「誰がジジザルだ!握り飯は絶対にやらん」
たね  「ケチ!バカ!テングザル!」
秀吉  「テングザル?」

など秀吉とたねの幼稚なケンカの中で。
ブルー転換。

<13>に続く


ここから先は

0字
重要ポイント以外は無料で読めますが、面白いと思ったらぜひ購入して全部読んでいただけたら嬉しいです。笑えて泣けてちょっとだけ学びになるかも。再演をしてくれる劇団、スポンサーになってくれる企業様を大募集です。

舞台台本です。最重要部分以外は無料で読めます。 (初演:2016年11月) 天正10年6月2日早朝。戦国の流れを一変させた「本能寺の変」…

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートは劇団活動費などに使わせていただきます!