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「稚拙で猥雑な本能寺の変」19,20

○シーン19 山中・光秀軍の拠点(夜)

烏帽子鎧の光秀、甲冑姿の秀満が上手前高台へ。
眼下に本能寺が見える。

秀満  「殿、いよいよですな」
光秀  「その後、報せはないか」
秀満  「未だ何も・・・」
光秀  「そうか」
秀満  「織部様も平太も必死で探しておりますが・・・」
光秀  「・・・」
秀満  「覚悟をお決めいただいたほうがよろしいかも知れません」
光秀  「すまぬ」
秀満  「全ては明智家のためでございます」

そこに上手よりやってくる甲冑姿の忠興。

忠興  「義父上」
秀満  「報せが来たか?」
忠興  「え?」
秀満  「しず様が見つかったのではないのか?」
忠興  「いえ、羽柴の軍勢が続々と京に向かっているとの報せが」
秀満  「何?秀吉軍が?」
光秀  「ご苦労であった」
秀満  「秀吉は殿を信じていないということでしょうか」
光秀  「だろうな」

眼下を臨む光秀、秀満、忠興。

忠興  「義父上、間もなく日が暮れます」
光秀  「・・・」

光秀、秀満、上手へ捌ける。

○シーン20 本能寺・秀吉のアジト

秀吉が下手より来る。
追って久作、フロイス、八方斎。

秀吉  「30?」
フロイス「はい」
秀吉  「信長は兵を30人しか連れて来ていないのか?」
フロイス「間違いありません」
秀吉  「あいつはバカなのか?」

縁にどっかと座る秀吉。

秀吉  「久作、お前はどう思う?」
久作  「信長は謀反など起こらないと思っているでしょう」
秀吉  「・・・そうかな」
久作  「は?」
秀吉  「信長は大胆不敵かつ冷静沈着な男。だからこそここまで上り詰めたのだ。必ず何かあるはず。それを突き止めるのだ」
久作  「はあ」
秀吉  「光秀は?」
八方斎 「1万の軍勢を率いて山中に潜んでおります」
秀吉  「さっさと攻め込めばよいものを・・・何をチンタラやってるのだ。さっさと謀反を起こせ」

周囲の冷たい反応。

久作  「では、支度がありますので」

久作、八方斎、下手に戻ろうとする。

秀吉  「・・・久作」
久作  「はい」
秀吉  「俺を悪人だと思うか?」
久作  「いえ」
秀吉  「八方斎」
八方斎 「戦国の世を制するには善悪で判断をしてはならぬかと」
秀吉  「・・・俺の生まれは中村のドン百姓だ」
八方斎 「はい」
秀吉  「戦いに戦いを重ねてやっとここまで偉くなった」
八方斎 「大したものでございます」
秀吉  「久作、誰のおかげだと思う?」
久作  「秀吉様ご自身のお力かと」
秀吉  「バカだなあお前は」
久作  「バカ?」
秀吉  「全てはねねのおかげなのだ」
久作  「御方様?」
秀吉  「そう。俺はただ、ねねに楽をさせてやりたいのよ」
久作  「はあ」
八方斎 「・・・」
秀吉  「ホレ、戦の支度だ。支度をせい」
八方斎 「は」

下手に捌けていく。

<21><22>へ続く


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