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私が、起業した時のこと(連載2) 印刷所を探せ!

(前回のあらすじ)学習塾を立ち上げた私は「生徒募集のちらし」を作っていないことに気がつく。しかし、今まで「学習塾の先生」だった私に、広告をつくる知識はない。開校までのこり三週間!


開校まで、あと三週間!

 ほぼ丸一日を費やした作業を終えてから、完成したチラシを自宅のプリンターで印刷して眺めてみた。これで良いのか悪いのか、自分では判断できなかった。良いとは思えないが、何が悪いというわけでもない。そして自分が書いた文章が、これから不特定多数の人達に読まれるのだ、と考えると背中のあたりがそわそわした。  

 もちろん、もっと時間をかけて推敲するべきクオリティであることは間違いなかった。 読み返す度に、句読点や漢字とひらがなのバランスなど、細々とした部分に修正を加えたくなった。
 しかしこの段階で、開校まで3週間を切ってしまっていた。早く印刷しなければいけない。「もう、 時間がない。急いで印刷しなければならないから」と自分に言い訳をして、完成とすることにした。

印刷してくれるところを、探せ!

 次の課題は「どこで印刷するか?」だった。現在ならば、手元のスマートフォンに「チラシを印刷してくれるところを教えて」と話しかければ、候補をずらりと並べてくれる。その場で見積もりを頼むことも、データを送信して発注することだってできる。実際に私も、今はそれで発注することも多い。

 しかし当時は「タウンページ」で電話番号を探し、電話をかけて問い合わせなければいけなかった。(読者のみなさんの中には、タウンページを使ったことがない人も増えているかと思う。タウンページというのはNTTが発行している職業別電話帳で、会社や店を探す時はそれを使って調べたのだ)

 「あの・・・新聞に折り込むチラシを作りたいのですが」
 「は? チラシ? そんなのうちはやってないね!」

 と、つっけんどんな対応をされたりしないだろうか? などと余計なことを考えながら調べていくと、通勤途中に印刷所があることがわかった。

 ぐるりと記憶を巡らせてみると、確かに雑居ビルの一階に「それっぽい」看板が出ていたような気がする。大きな通りに面していたから、なんとなく入りやすそうな印象もあった。よし、もうここにしよう。今日、通勤の途中に立ち寄ってみよう。そう決めて仮眠をとることにした。

「個人でやっているの?」

 数時間後、私はフロッピーディスクに保存したチラシのデータを、印刷店に持ち込み相談することにした。渡された名刺には「店長」と記載されていた。年齢は四十歳くらいだろうか。いらっしゃい、ではなく、何だい? とざっくばらんな感じで接する人だった。

 私は持ってきたフロッピーディスクをカウンターの上に置くと、チラシを印刷
したいのだけど独立したばかりで費用も時間もないことを正直に話した。下手に誤魔化すよりも、素直に相談した方が良さそうだと思ったからだ。
 店長は、ああそう、とディスクを手に取ると、近くにあったパソコンにデータを読み込ませた。私は学校の先生に答案を確認してもらっている時のように、背筋を伸ばして店長からの反応を待った。

「個人でやってるの?」と店長は言った。
「そうです」
「ふうん」
「データは大丈夫そうですか?」
「そうだね」
「お願いできますか?」
「ああ、やっておくよ」

 店長はカレンダーを見ながら日程を決め、私に印刷枚数を確認して電卓を叩くと「儲かったら、次からちゃんと払ってもらうから」と、料金表に記載されているよりも安い印刷費を提示してくれた。

 「支払いの方は・・・」
 「初回は先払いなんだけど、今ある? あそう。じゃあ受け取りの時でいいよ。そのかわり配達には行かないからさ。自分で取りにきてよ」

 それで終わりだった。デザインやキャッチコピーについて触れられることもなかった。受け取り書なども渡されなかった。こんなに簡単な感じで大丈夫なのかな、とも思ったが(まあ、悪い人でもなさそうだし……)と考え、よろしくお願いします、とあいさつをして店を出た。(その3へ つづく)


次回予告

なんとかチラシを作り、印刷会社に持ち込みでお願いすることができた。そして、指定された日にチラシを取りに行った私は、店長から「あるひとこと」を指摘されることになる。

・起業した時のこと(その3)は現在執筆中です。
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