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人はお金よりも、成長機会を求めている

社員や顧客にとって「満足度が高い状態」とはどんな状況でしょうか。企業は定期的に「社員満足度調査」や「顧客満足度調査」に多額の費用と時間を費やして、社員とお客さんの感情を理解しようとしています。果たして企業は調査結果に応じて、効果的な次の一手を打てているのでしょうか。

私が勤めていた米系企業でも、毎年、年によっては半年に一度はウエッブ上で匿名の社員満足度アンケートを実施していました。米系企業の株主は「社員満足度が低い会社は、社員のモチベーションに影響し生産性が悪い」と判断します。よって調査結果が芳しくないと、経営陣は、社員とのランチ会を開催したり、全社員会議という名のパーティーを開催しギフトを配ったり、あの手この手で社員の満足度を改善させようと躍起になります。

同様に、法人顧客に対しても、豪華ディナーで接待をし、満足度を上げようとします。ただ、それらの対策が長期的な効果があったかどうかは甚だ疑問です。

今日は私が財務部門長として、部下や顧客と接した経験から、「いかにして彼/彼女らの満足度を高められるか」について、共有したいと思います。

以下の順にお話しします。

1. 部下の満足度を上げる
- 権限委譲する
- 期待値を具体的に示す

2. 顧客の満足度を上げる
- 値引きよりも業績改善のためのスキルアップ


1. 部下の満足度を上げる

自身が部門長としてチームを率いていた時に、部下の人たちの満足度が高くない時がありました。そこで、各自と1オン1やチームミーティングを重ね、何度も話しを聞きました。どうやら報酬や休暇が不満の根本的な原因ではなさそうです。話し合いの結果わかったことは、部下の人たちは若い人も中堅も「もっと能力を高めたい、将来の可能性を広げたい、でもその機会が限られている」という共通の不満でした。

確かに思い当たる節がありました。米系企業では役職が高くなるほど管理職研修などの社内トレーニングを受ける機会が頻繁にあります。一方で一般社員は一部の将来を有望視されている者以外は、トレーニングを受ける機会が限られます。よって、部下の人たちは「自分たちは会社にとって投資に値しない人材」と感じていたようです。

-権限委譲する

そこで私は、なるべく部下の人たちに以前よりも権限委譲し、業務を通じてスキルアップを図ることにしました。例えば、通常ですと自分が同僚の他部門の責任者にプレゼンするところを、2人の部下に権限委譲して任せることにしました。すると、彼らは自分たちが上司に信頼され始めたことと、なにより、着実にプレゼン能力が上達していることを実感したことにより、いきいきとしてきたのです。プレゼン準備で夜中まで残業する日々が続いてるにも関わらず。

この時に、気づきました。自分は今まで仕事の効率を優先して、部下の成長機会を奪っていたのです。深く反省しました。

-期待値を具体的に示す

また、もう少し経験の浅い、分析作業を専門にしている部下の人には別の策をとりました。彼女に仕事を頼む前に、実際に私が手を動かして一通り自分が期待しているエクセルによる分析、および分析結果のプレゼン資料の一例を作って見せました。すると、彼女は具体的な期待値が理解できたこと、また新しい分析手法や上司の観点が理解できたことで、仕事の納得感が高まったようでした。それにより、以前より積極的に仕事にむきあうようになりました。具体的には自分から私に質問や提案をしてくるようになったのです。

ここでも、自分は今まで、経験の浅い部下の人に、十分なアウトプットのイメージや必要な知識を与えていなかったことを反省しました。

これらの経験から、部下の人たちは「新しい挑戦をしたり、新たなスキルの習得ができる環境にいると、継続的な成長を実感し、満足度が高まる」ことを学びました。

パーティーやギフトは一瞬の喜びを社員に提供しますが、その感情は長続きしないでしょう。継続的に部下の充実感と仕事に対する満足度を上げるには、上司は「成長の機会」を常に意識して与えることと思いました。

2. 顧客の満足度を上げる
- 値引きよりも業績改善のためのスキルアップ

だいぶ前になりますが、会社の営業部門を通じて、地方の小規模な法人顧客から、財務部門長だった私にリクエストがありました。内容は「売上や利益など業績予想を毎月見直す仕組みを社内に構築したい。」でした。

彼らは毎月の決算業務ついては問題なく遂行していたのですが、「今後の業績見通し」といった分析作業はやり方がわからず、先のことについてはいつも暗闇を歩いている状態でした。

一方で、私が勤めていた大手米系企業では、本社経営陣より毎月ごとに今年の業績予想の報告を求められるため、全世界共通の財務手法が確立されていました。

そこで、財務部門長の私から、お客さんの会社で業績予測の仕組みを数日かけて説明しました。彼らは知識がないだけで、業務遂行能力は高いため、一度やり方を理解すると、すぐに私が説明した通りの業績予想の仕組みを社内に取り入れることができました。

その後、私が驚いたのが、この法人顧客の社員の方々が「新たな能力が身について、業務のレベルが上がった!」と心から喜んでくれたことです。もう10年以上前のことなのに、今でもふざけて私に「師匠!」と言いながら、感謝してくれています。

法人顧客は、値引きや販促リベートを増やした時にも、感謝してくれるのですが、それはその時だけです。

その後、この法人顧客は売上予測の精度を上げ、在庫処分が減り、業績が良くなりました。こちらもこの法人顧客への売上見込みが立てやすくなり、Win-Winの関係を築くことができ、お互いの信頼が高まりました。

このことから、やはり部下の育成時同様、人はお金よりも成長の機会や新たなスキルの習得によって、充実感や満足感を得るのだと、改めて思いました。

私個人の経験からの学びですが、何かのご参考になれば幸いです。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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