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人と違うということ(第25話)

SNSで大反響だった実話
小5と余命宣告」続編(第25話)です。

父ひとり、子ひとりの家庭で育った娘が
小5の時に、その父の余命宣告を受け
その後の覚悟と成長を描いた実話。

脚色は一切なし。
むしろ、各方面に配慮し
わざわざ抑えて書いているくらいです(笑)

ということで、
これは長~く続く連載ものです。

初めての方は、1話からどうぞ。




合格発表の日。


同じ中学校で、

私と同じ高校を受験した生徒は

一人もいない。

この たった一人の生徒のために

受験結果を確認するため自分の車で、

わざわざ高校まで行ってくれていた

担任に言われたことをガン無視して

勢いよく家を飛び出した。




やっぱりこの目で、

自分で 確認したい!

他人なんかに任せられない!


思い立ったら・・・

と勢いに任せて、向かったはいいが

やっぱりバスの中でも同じ。



落ち着かない…


心臓が、ドキドキ、バクバク...

この時間が耐えられない。


人の脳にも、早送り機能があればいいのに。



気が逸る(はやる)


早く着きたい気持ちで、頭がいっぱい。

道中を楽しむ余裕なんて、もちろんない。


バスを降りて、高校までの

決して短くはない距離を猛ダッシュ!

肌に当たる冷たい風を感じながら

とにかく、走った。


息をハァハァ、切らして

高校の門を入っていく。


着いた時間が遅かったので

受験番号が書かれた掲示板の前には、

もう誰もいなかった。


自分の番号を探す。

絶対に見逃さないように、

すごい集中力で。


他の数字を認識しながら

「違う」「違う」って

脳が判断していくその時間は

すごいスローモーションだった。







あった...



受かった...



全身の力が抜けた。


大きく見開いていた目を閉じて

深いため息をついた。



あった

良かった...


とにかく、ホッとした。



確認できたから、すぐに学校に戻らなきゃ!


と、わずか数分で来た道を戻った。



合格者は、体育館に13時に集合!


の時間を大幅に遅れていた。


既に、集会は始まっていたので

体育館後ろの入口からこっそり入った。


つもりだったのに、

すぐに全員が、私を見てザワついた。


「なんで?なんで?どーゆーこと?」

「え?うそでしょ?」


女子たちのコソコソざわざわの声。

一瞬、意味がわからなかった。

???

そんなに目立っちゃった?

なんでみんなして

そんなに私に反応するんだろ?

私が遅刻して来たから??

え?なに?この異様な空気感・・・



「いいよなぁ、あんなんで受かって」
 
「こっちは、やってらんないよな」



聞こえたのは、

入ってすぐ、右ナナメ前あたりの、

男性生徒たちの言葉だった。


すぐにそっちを向いて、

その男子生徒のところまで行き


「何にも知らないくせに、うるせーよ!

 ボンボンは、黙っとけっ!」


と、言いに行こうと思ったけど、

睨み付けただけで、止めた。

怒りを我慢した訳ではない。



その言葉が耳に入ってきて

一瞬だけ感じた、そんな怒りよりも

強く残った気持ちがあったからだ。



向こうからしてみれば、そうだよな...


自分たちが勉強というものに本気になって

かつてないくらいに真剣に向き合い

そこには、それぞれが掛けてきた思いや

味わった感情がたくさんあったはず。


言わば、

この場は、その努力が報われた

選ばれた人たちの集まりだ。


授業のほとんどを、まともに受けもせず

保健室で寝て過ごしきて、

更に、お気楽で自由行動ばっかりの

不良っぽい女子。


そんなのが、この場に現れて

しかも遅刻してるのに、こんなに堂々と...


そりゃぁ、いい気分はしないわ。

そんな言葉だって、出るよな。


それをちゃんと察したから。





感じたのは、孤独...


わたしは、この人たちとは違う…



今までも、

そしてこれから送る高校生活も

この場にいる同級生たちとは

全く違うものになるだろう...



もちろん、それで良いんだ!

自分で、選んできたのだから。



の、はずなのに...


さっきの受験番号の掲示板の前では

全く出なかった涙が、

ほんの少しだけ目に溜まり

私の視界を邪魔した。


すぐに、

あくびでごまかした


理解されない寂しさを...




 恥ずかしい卒業式(第26話)

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