たけだ さとみ

こんなかんじの出で立ちをしています

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記事一覧

わたしの好きなひと

わたしの好きなひと リュックをしょったままポケットに定期入れをしまうひと 積もってきた日常を感じる わたしの好きなひと イヤフォンを両耳同時にすぽんと抜くひと 空気…

五感のいちばん尖ったとこを

五感のいちばん尖ったとこを 知ったひとがどれほどいるか 各人の歴史 生きた轍 時の連なり すべてことごとくに反映して 二又でも三叉路でも 迷うとは思いよらず 他人には…

ゲネプロ

本番がはじまるよ 世界の本番がはじまるんだよ ぼくには故郷はないけど 帰りたい場所ならあるんだ 乳白色で とろりとしてて ひんやりと気持ちがいいんだ はやく さあ …

知っているものと知らないもの

もうすでに、 知っているものを何回もくりかえすのが好きだ。 映画も、音楽も、場所も、 一度見たもの、聴いたもの、行ったところに、 できればくりかえし触れたい。 …

広島細密日記②

5:30の目覚ましの前に目が覚める。外はまだ薄暗い。ぼんやりとした頭で、昨日の記憶をダウンロードする。なんでこんなに早く起きる必要があるのか思い巡らし、6:25…

広島細密日記①

思い立って広島へ向かう。なんとなく西に行きたい、海が見たい、と思ってふと浮かんだのが宮島だった。いつかあの赤い鳥居を見てみたいと思っていたのでちょうどよい。そう…

海辺のカフカ

月曜も始業時間をすぎたというのに、 なかなか働く気になれないので日記を更新する。 あ、正確にいえば、私の部署はフレックス制になったので、まだか。 この前、埼玉まで…

そんなのロマネスクじゃない

アルミ製の大きなものを持ちながら都会を歩くのは神経を使う。 しかもトレイのように、薄っぺらくてカンタンに風に煽られてしまい、おまけに古本屋さんでもらうような向こ…

ツナサンド観察記

一人暮らしを始めたからといって、 生来の苦手意識がなくなるわけでもない。 大抵は街に人見知りしているので ぽっかりと次の予定まで時間があいてしまうと、 わたしは…

マッカーサーam1:00

マッカーサー マッカーサー まっさかさまのマッカーサ お決まりコースはありません 数億年かけてもできません ただ マグマの下を通ってください 息をひそめて走ってくだ…

洗濯機とパトカー

言いたいことも 書きたいことも 考えたいこともなく ただ 眠りたくない夜 わたしは 詩を 音読する 書く ―おー い 小さ な 時 計 やさん  猫 背をのば し  …

生活する。

生活が始まりました。 毎日がおもしろいです。 今まで実家生のダメなところをつぎ込んだ、 休日はソファと並行になって終日過ごすだけ、の人間だったので、 新鮮なことが…

8月27日と28日の日記

日記の世界では、 せっせと昨日を生きています。 弟とごはんに行きました。 弟は音楽のしごとを(まだ学生ですが)やっているので、 なんだか外見もその道っぽくなって、 …

8月26日の日記

万年筆は、 かんたんに人生をちょっと良くする。 文字を書くのが好きなので、 万年筆は好きなことをなおさらに楽しくしてくれる。 しばらく使っていた万年筆が、 あんま…

サーカスナイトが通り過ぎた

せかいのことは あまりにひとりごと ぐるぐると回って ゆらゆらと巡って わたしは 宇宙をみるよ 拠りどころは ご自分で そうしてまた 自転をくり返していく せかいのこ…

スポーツとしんり

いくつ 見つけてからだろう。 いくつ 捕まえてからだろう。 いくつ 愛でられるだろう。生きているうちに スポーツと おんなじだ。 反射で タイミングで 感覚で つか…

わたしの好きなひと

わたしの好きなひと
リュックをしょったままポケットに定期入れをしまうひと
積もってきた日常を感じる

わたしの好きなひと
イヤフォンを両耳同時にすぽんと抜くひと
空気の通った生活を感じる

わたしの好きなひと
ニヒルな笑い方をするひと
そうせざるをえなかった理由を感じる

わたしの好きなひと
青信号に一歩出遅れるひと
なにに思い馳せていたのか尋ねたい

わたしの好きなひと
マス目を無視して文字を書

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五感のいちばん尖ったとこを

五感のいちばん尖ったとこを
知ったひとがどれほどいるか

各人の歴史
生きた轍
時の連なり
すべてことごとくに反映して

二又でも三叉路でも
迷うとは思いよらず
他人には魔宮に見えれど
あなたにはただ一筋ひかれている
わからなくてもわかっている

「わたしは耳。
音が鳴ればからだがうれしい。
目のほうはサッパリですが」という人
それでいい それでいいの

目と耳と鼻と口と肌で社会ができます

ゲネプロ

本番がはじまるよ
世界の本番がはじまるんだよ

ぼくには故郷はないけど
帰りたい場所ならあるんだ
乳白色で とろりとしてて
ひんやりと気持ちがいいんだ

はやく さあ はやく
扉がしまっちゃうよ
「忘れてたら思い出させてね」
って言ったくせに あの日
きおくの場所を
きみは教えてくれなかった

ぼくはビオラをやるから
きみはティンバロをやるといい
役者はそろった 空気もいい
幕が開けたらせーのでジ

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知っているものと知らないもの

もうすでに、
知っているものを何回もくりかえすのが好きだ。

映画も、音楽も、場所も、
一度見たもの、聴いたもの、行ったところに、
できればくりかえし触れたい。

知らないものは怖い。
知らないものは刺激的。
知らないものは美しい。
そんなにはいらないや、と思ってしまう。
心がもたない。

と、思ってはいるけれど、
知らないものに果敢に挑戦している人を見ると、
知らない世界で楽しそうに

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広島細密日記②

5:30の目覚ましの前に目が覚める。外はまだ薄暗い。ぼんやりとした頭で、昨日の記憶をダウンロードする。なんでこんなに早く起きる必要があるのか思い巡らし、6:25に始発のフェリーが出ることを思い出す。そうだ、朝の厳島神社に行くのだ。朝の海を見て、朝のフェリーに乗るのだ。

シャワーを浴びて身支度を整える。チェックアウトを今してしまうべきか、どのみち帰ってくるか、どちらが効率的か天秤にかける。旅にはた

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広島細密日記①

思い立って広島へ向かう。なんとなく西に行きたい、海が見たい、と思ってふと浮かんだのが宮島だった。いつかあの赤い鳥居を見てみたいと思っていたのでちょうどよい。そういえば広島には原爆ドームもある。今まで見たことがなかった。ちゃんと見てこよう。

IKEAの分裂するリュック(とても便利)にぽいぽいぽいと荷物を詰め、宮島の近くの残り1室だったホテルを慌ててとって、新幹線に乗り込む。広島まではのぞみに乗って

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海辺のカフカ

月曜も始業時間をすぎたというのに、
なかなか働く気になれないので日記を更新する。
あ、正確にいえば、私の部署はフレックス制になったので、まだか。

この前、埼玉まで行って舞台『海辺のカフカ』を観た。
きれいで、切なくて、
ごろっとした湿り気のある寂しさを持たされたまま、
雨のそぼ降る世界にぽいっと投げ出されたような気分になった。

劇場までの道を、
ひとの波にそって行き、
劇場からの道を、
ひとの

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そんなのロマネスクじゃない

アルミ製の大きなものを持ちながら都会を歩くのは神経を使う。
しかもトレイのように、薄っぺらくてカンタンに風に煽られてしまい、おまけに古本屋さんでもらうような向こうが透けて見える薄いビニル袋に入れてあるものは尚更だ。

ちょっと気を抜いたすきに、あっちこっちに当たってバイイイインッという轟音を立てる。周りのひとがびくっとし、怪訝そうな目でこちらを見る。
すみません、バイイイン、すみません、バイイイイ

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ツナサンド観察記

一人暮らしを始めたからといって、
生来の苦手意識がなくなるわけでもない。

大抵は街に人見知りしているので
ぽっかりと次の予定まで時間があいてしまうと、
わたしはとても混乱する。

せめてもと安心できそうな喫茶店に逃げこむのだけれど、
(そういうときタバコの匂いはとても安心する)
基本的に警戒しているからか、
周りを見渡し、つい会話を盗み聞いてしまう。

ひとの会話は、リズムだ。
ひとは、

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マッカーサーam1:00

マッカーサー
マッカーサー
まっさかさまのマッカーサ

お決まりコースはありません
数億年かけてもできません

ただ マグマの下を通ってください
息をひそめて走ってください

あの人にバレてはいけません

びくっとしてはいけません
瞼を閉じてはいけません
深呼吸しちゃいけません
こっそり見るのもいけません
歩幅を合わせちゃいけません
ジタバタしてもいけません
迷子になっちゃいけません
赤信号わたっ

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洗濯機とパトカー

言いたいことも
書きたいことも
考えたいこともなく
ただ 眠りたくない夜
わたしは 詩を 音読する 書く

―おー い 小さ な 時 計 やさん
 猫 背をのば し
 あな た は 叫ん で いいの だ
 今年 も ついに 土 用 の 鰻と 会 わなかった と―

そうやって好きな詩を
ひととおり 声に 文字に 呼び出して
身体を通っていってもらう
飽きるまで 飽きるまで

―おーい 小 さな 釣

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生活する。

生活する。

生活が始まりました。
毎日がおもしろいです。

今まで実家生のダメなところをつぎ込んだ、
休日はソファと並行になって終日過ごすだけ、の人間だったので、
新鮮なことが多すぎてびっくりしています。

生活することに対して、
今まで一切のおもしろさを見出してこなかったのですが、
今では一切がおもしろく見えます。

ドラム式洗濯機がぐるぐるするのをずっと眺めて、
こういう動きで1セットに設定してるんだなあ

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8月27日と28日の日記

日記の世界では、
せっせと昨日を生きています。

弟とごはんに行きました。
弟は音楽のしごとを(まだ学生ですが)やっているので、
なんだか外見もその道っぽくなって、
黒い帽子なんかかぶっていて、
さぞかし異世界かと思いきや、
なかみはちっとも変わっていませんでした。

姉弟でカウンターに座ってお酒を飲んだのは生まれて初めてで、
子どものころいつかはくるのかな〜なんてそわそわしつつ、
わたしがお酒を

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8月26日の日記

万年筆は、
かんたんに人生をちょっと良くする。

文字を書くのが好きなので、
万年筆は好きなことをなおさらに楽しくしてくれる。

しばらく使っていた万年筆が、
あんまり出が良くなくなってしまったので、
同じメーカーの、こども用の万年筆を買った。
手が大きいわりに、使うのはいつも子ども用。
書きやすいからいいのだ。

今日は、たくさん文字を書いた。
文字を書いている(正確には写している)とすぐ飽きて

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サーカスナイトが通り過ぎた

せかいのことは
あまりにひとりごと

ぐるぐると回って
ゆらゆらと巡って
わたしは 宇宙をみるよ

拠りどころは
ご自分で
そうしてまた
自転をくり返していく

せかいのことは
あまりにひとりごと

ぐるぐると巡って
きらきらとまたたいて
ちいさなビックバン 耳元でおこるよ

拠りどころは
見つからず
ポーンとまた
自転は繰り返していく

せかいのことは
あまりにひとりごと

だれかとだれかの

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スポーツとしんり

スポーツとしんり

いくつ 見つけてからだろう。
いくつ 捕まえてからだろう。
いくつ 愛でられるだろう。生きているうちに

スポーツと おんなじだ。

反射で タイミングで 感覚で
つかもうと 神経に 号令をかけて
ボールが 過ぎ去ったのは
また 随分と昔のこと。

(投げられたのはとっくのとう 構えたのはごく最近のはなし)

スポーツと おんなじだ。

たいていは 自分のところを過ぎ去ってから

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