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コピーペーストは一日一回まで

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詩みたいなもの
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記事一覧

五感のいちばん尖ったとこを

五感のいちばん尖ったとこを
知ったひとがどれほどいるか

各人の歴史
生きた轍
時の連なり
すべてことごとくに反映して

二又でも三叉路でも
迷うとは思いよらず
他人には魔宮に見えれど
あなたにはただ一筋ひかれている
わからなくてもわかっている

「わたしは耳。
音が鳴ればからだがうれしい。
目のほうはサッパリですが」という人
それでいい それでいいの

目と耳と鼻と口と肌で社会ができます

ゲネプロ

本番がはじまるよ
世界の本番がはじまるんだよ

ぼくには故郷はないけど
帰りたい場所ならあるんだ
乳白色で とろりとしてて
ひんやりと気持ちがいいんだ

はやく さあ はやく
扉がしまっちゃうよ
「忘れてたら思い出させてね」
って言ったくせに あの日
きおくの場所を
きみは教えてくれなかった

ぼくはビオラをやるから
きみはティンバロをやるといい
役者はそろった 空気もいい
幕が開けたらせーのでジ

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マッカーサーam1:00

マッカーサー
マッカーサー
まっさかさまのマッカーサ

お決まりコースはありません
数億年かけてもできません

ただ マグマの下を通ってください
息をひそめて走ってください

あの人にバレてはいけません

びくっとしてはいけません
瞼を閉じてはいけません
深呼吸しちゃいけません
こっそり見るのもいけません
歩幅を合わせちゃいけません
ジタバタしてもいけません
迷子になっちゃいけません
赤信号わたっ

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洗濯機とパトカー

言いたいことも
書きたいことも
考えたいこともなく
ただ 眠りたくない夜
わたしは 詩を 音読する 書く

―おー い 小さ な 時 計 やさん
 猫 背をのば し
 あな た は 叫ん で いいの だ
 今年 も ついに 土 用 の 鰻と 会 わなかった と―

そうやって好きな詩を
ひととおり 声に 文字に 呼び出して
身体を通っていってもらう
飽きるまで 飽きるまで

―おーい 小 さな 釣

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ドンキレジ横1円玉戦争

ドンキレジ横1円玉の社会的意義を100文字以内で答えよ

ドンキレジ横1円玉の社会的意義を150文字以内で答えよ

ドンキレジ横1円玉の社会的意義を200文字以内で答えよ

ドンキレジ横1円玉の社会的価値はドンキレジ横1円玉で幾らか答えよ

ずっとずっと前の、ごく最近のはなし。

割れて割れて
割れたかけらは
いつか血管を傷つけるだろうか。

忘れてしまえば済むのだろうか。
それは「運」と呼べるものだろうか。

忘れて忘れて
忘れた記憶は
いつか人生を変えうるだろうか。

思い出すのは因果だろうか。
それは「罪」と呼べるものだろうか。

変わって変わって
取って代わって
私は本体を明け渡すだろうか。

名も知らぬだれかに。
それは「愛」と呼べるものだろうか。

そのとき電流

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瞬間を教えてあげたい

瞬間を教えてあげたい
犬を飼った瞬間を
日々夢見ていたころの私に

ふわふわの毛並みがどんなに心地よいものかを
頭を撫でると目を細めるその顔が
どんなに幸福そのものかということを 知らなかった私はたしかにいた

その「はじめて」の
震えるような歓びを
瞬間を教えてあげたい

瞬間を教えてあげたい
恋が叶った瞬間を
何も知らなかったころの私に

目も口も弛んでしまうということを
からだの奥からじゅわ

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補助線を引け

思い切って引いてしまいなよ
2つの点を結んでおあげよ

歩いたことのない道ができるよ

勇気を持って伸ばしてしまいなよ
真っ白な海原に線を旅立たせておあげよ

見たことないかたちが生まれるよ

ああ 補助線
名前はいけてないけど
しごとはうんと魅力的さ

日常に補助線を
息を吸うように補助線を
そこから世界が生まれるよ

それってすごいことさ

満員電車

それはあさの狂気

この時ばかり 人は皆
自分が液体だということを忘れている
固体として物質として暴力として乗り込んで来る

たぷたぷたぷ
がたんごとん
人が揺れる 人の液体が揺れる

電車が駅にへばりつくと
数々の細かい暴力と意思が
乱反射の矢印になって
人が吐き出される 蹴り出される

たぷたぷたぷ
がたんごとん
人が揺れる 真赤な液体が揺れる

どこかでイタイとだれかが叫ぶ
圧がかかってだれ

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いつかやりたいこと

いつかやりたいこと

高速崇拝者に
一般道の愉快さを
布教したい

目薬の差し方を
出身地別に分類したい

花粉が人類を滅ぼしうる可能性について
議論したい

バランス良く食べなきゃだめよ
と何度でも注意したい

箸が平等に折れなかった時の
ただしい反応に
21世紀の答えを出したい

星を見つけて
どうでもいい名前つけたい

眠りにつく瞬間をつかまえたい
つかまえたら手放したい

やりたいけどきっ

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万年筆

万年筆のインクを怖がれる自分は
なんてしあわせなのだろう

朝があたたかいのは寒がらせたいやつらもまだきちんと起きていないから巨大なイキモノがはっていったその体温が残っているからゴネるのに味をしめた夜がべっとりとまとわりつくから大地の呼吸・水蒸気の手加減・漆黒の悲しさなどなど
つまりは みんな恥ずかしがりだから

絶望は明るみに出したもん勝ち

絶望は明るみに出したもん勝ちの世の中よ

ずるくはないか
逃げてはないか
腹をくくるのが偉いのか

三軒先にあるうちはまだ大丈夫
でももしも
絶望が曲がり角まで来たときに
正しくウゲッてできるよう
バターを丸呑みしている

対・絶望への予行演習だ

家族鍋

こわれたトイレが直るまで
おじいちゃんおばあちゃん
家に来ている
期間限定三世帯

人が増えると
においが変わる
はじめて我が家にやってきた
期間限定三世帯

土日すら集まれなくなった家に
みんなが早く帰ってくる
どこかソワソワした顔で
期間限定三世帯

お風呂上がりぽかぽかの顔
ミッキーパジャマのおじいちゃん
曜日を一度も当てられなかった
困った笑顔のおばあちゃん

「ママ声でかくなったよね」

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