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『平和の国の島崎へ』6巻

エンタメとしての「元凄腕傭兵が日常に馴染もうとするお話」の部分は一旦しっかりと描いてみせて、ここからが本当に描くべき「伝えたいこと」なのかなと思わされた新刊。 とにかく帰国直後の「島崎の顔」の描きかたがスゴい。 人間ではなく殺人マシーンとして「道具として」生きてきてしまった人間の顔が、今の島崎の顔になるまでの物語がここから描かれるんだろうけど、同時に「島崎が戦場に戻るまで」の流れも描かれるのだろうから今からもう想像するだけでキツい。 何かを変えようとするとそれに合わせて他の色

    • 『だんドーン』4巻

      今まで読んだ桜田門外の変の中では一番面白かった。 歴史的資料と漫画的キャラの塩梅もめっちゃ考えてるんだろうなと思うし、タカの今後とかめっちゃ気になるしいい物語に仕上げるなぁとは思う。 ただ面白いんだけど、ギャグ(ていうかユーモア?)の入れ方とタイミングがどーしても合わない。意図はわかるんだけど合わない。 これはもう生理的な話かなーと思う。

      • 『住みにごり』6巻

        勝手にこのままラストまでいくもんだと思ってた。 それくらい色んなバランスがメチャクチャ良かった。そのバランスっていうのは「ぶっ壊れそyなものがギリギリ立っている」みたいなバランスで、だからこそ派手に倒れたらそこで終わると思ってた。 でも、終わらなかった。 派手に倒れても、一度壊れても、人生は続いていく。 そういう意味で新章に入ってること自体がメチャクチャ「住みにごり」っぽいと言えるのかもしれない。 新章でようやく末吉の話になってきたわけだけど、ずっと「当事者だけど当事者

        • 『逃げ上手の若君』16巻

          略奪話の後の松井優征のコメントがとっても印象深い。 馬2頭にひとりで乗って生きた人間(仲間)を弾としてぶん投げて4万の敵を崩壊させるキャラを描いても、歴史的事実である略奪を省くことはしない。 「ここはエンタメとしてのデフォルメ」「ここは歴史への敬意」という自分の中のルールがメチャクチャしっかりある証拠だし、それがとっても松井優征らしいと感じる。 自分の中で決めた譲れないルールを絶対に守る描きかたと、歴史的に残されたものを「見方を変えてみよう」としてエンタメに落とし込む発想力

        『平和の国の島崎へ』6巻

          『ワンピース』109巻

          この1シーンが描きたくて描きたくて仕方ないのを引っ張って引っ張ってドン!と決める尾田栄一郎スタイルだけど、くまの一撃がサターン聖に決まる見開きは今までに無い新たな迫力があってスゴかった。あえて崩してるような想いが先走る絵。ここに来て更に進化するんだから尾田栄一郎はキチガイです。 考察とかはよう知らんけどとりあえずボニーかわいい。女版ルフィだったんだなぁ。

          『ワンピース』109巻

          『ジャンボマックス』11巻

          裏世界のプロがでばってきての本格的な殺し合いターン。 最初の被害者になってしまったキャラが、仕方ないけどソイツになってしまうのかという悲しさがある。 漫画的に「死んでもいいキャラ」みたいなのを作らないことや、その人物の死を「人間がひとり死んだ」という重さでしっかり受け止めるたてポンの器もこのお話として象徴的。 むしろ鹿子の方がフィクション臭いというか、未だに鹿子の内面とかがわからないので実は「ボスキャラとしての鹿子」が未だにしっくりきてないのが唯一の不満だったりする。 「魔女

          『ジャンボマックス』11巻

          【6月に読んだ漫画】

          『光が死んだ夏』 『僕が死ぬだけの百物語』 『平成敗残兵☆すみれちゃん』 『フォビア』 『君と宇宙を歩くために』 『放課後ひみつクラブ』 『ねずみの初恋』 『DOGA』 『杖と剣のウィストリア』 『ようこそ! FACT(東京S区第二支部)へ』 『忍者と極道』 『胚培養士ミズイロ』 『リップサービス』 『女神の標的』 『Xinobi -乱世のアウトローたち-』 『望郷太郎』 『二階堂地獄ゴルフ』 『ヴィンランド•サガ』 『アヤシデ』 『ヒストリエ』

          【6月に読んだ漫画】

          『ヒストリエ』12巻

          おんんんもしれええええい! マケドニアに来てから今までのことが全てフリだったかのように物語が動き始めてる感があり、おうおうおうマジですかという面白さで。 ただまぁもぉちゃんと面白くなってきちゃって、そのぶん次読めるのいつなんよという不安も更に募るわけですが。 それにしても改めて岩明均の「そこクローズアップする!?」というセンスには脱帽です。 映画監督でいうとシャマランとかにも似たセンスというか、「そこでカメラ寄るの!?」みたいな感じで、「そこの描写にこんなページ数使うの!

          『ヒストリエ』12巻

          『アヤシデ』2巻

          1巻のこの世の地獄的ないじめやら兄殺しやらの世界の禍々しさに比べると、雰囲気だけはだいぶ明るくなってはいる。 5年の月日が経って「本編開始」的な物語の始まりと共に、主人公の性格がだいぶ明るくなったからだろうけど、その主人公の性格の変化が明らかに「無理してる」とわかる。 他にも様々な爆弾が用意されていて、禍々しい世界が今にも暴発して溢れそうないやーな緊張感に満たされていていい感じです。 とにかく主人公の、なんというか、相手を伺うような、いわゆる「いじめられっこの笑み」の雰囲気

          『アヤシデ』2巻

          『ヴィンランド•サガ』28巻

          ああああ、始まってしまった。 このまま、いいことしか無いまま終わる訳はないとわかっていたけど、それでも苦しい。 誰が明確に悪いわけでもないのに、少しのすれ違いと少しの不運と少しのタイミングのズレで暴力が始まってしまう。 その暴力がどんな不幸を呼ぶかを考えるともう胸が痛い。 今まで積み上げてきた大切なものとその時間、そしてそこに紛れ込ませた「悪意の種」。 そういった要素を最大限にうまく使うのが本当に幸村誠はうまい。 特にやっぱり「大きな刃」。 たった一振りしかない剣。 最初

          『ヴィンランド•サガ』28巻

          『二階堂地獄ゴルフ』3巻

          改めて、俺が一番読みたかった福本伸行の漫画に戻ってきてくれた感じがしている。 町中華編(と言っていいのか?)のラスト、誰も幸せにならない地獄舞い戻っていく二階堂の姿は名作映画みたいな余韻。 架純が謎の不安を感じながら就寝して翌朝あの1本の道を作ってる二階堂を見るまでの心持ちは、同じ「夢という呪い」に食われた経験があるからだろうし、その禍々しい引力を知っているから止められなかったのだろうし。 個人的には「地獄ゴルフ」というタイトルが一番効いた瞬間だった。 地獄の渦中にいるどう

          『二階堂地獄ゴルフ』3巻

          『望郷太郎』11巻

          読む前から面白いのは確定してる安定感。 馬車争のドラマチックな勝利があっても全てがすんなりと決まることはなく、展開される謀略と出し抜きあい。 その中で「うまいなー」と思うのは敵方の中心であるブシフの描写をなかなか見せないとこ。 太郎達の反撃で天秤が傾いている報告は逐一いっている筈だけど、それを聞いて焦ったり感情を出したりする姿はなかなか描かれない。 それがブシフ(というかその裏にあるヒューマ)の存在が、まだこの世界の「太郎の知らない闇」として奥深さを残して感じられる。 その状

          『望郷太郎』11巻

          『Xinobi -乱世のアウトローたち-』1巻

          面白い! いわゆる手裏剣投げて飛び回る「忍者」ではなく、汚れ仕事を生業とする悪党集団としての「忍び」を描いた話。 とにかく世間一般に流布してるファンタジーとしての「戦国時代」のイメージに惑わされることなく、「本当はこうだったのでは?」という新しい戦国時代のイメージで物語を紡いでいくのが面白い。 そこを支えてるのが読んでるだけで伝わってくる圧倒的な資料と取材の数。 確かな情報から組み立てられる新しい「戦国時代リアリティ」がまず面白いです。 思わず「へー!」となっちゃうような

          『Xinobi -乱世のアウトローたち-』1巻

          『女神の標的』1巻

          ケンコバが帯書いてるのを見て購入。 戦後、大衆演劇の花形女優が父の残した陸軍の隠し金塊のせいで狙われる。 というあらすじがまぁもう面白いわけで。 小山ゆうみたいな大御所が戦後の時代をちゃんとこういうエンタメ話で描いてくれるのが嬉しい。 変に真面目にならずに直球でエンタメでやってくれてるのがいい。 戦後って舞台だてとして面白いんだから、もっとガンガンエンタメ作品見たいんですよねー。 アクション活劇でもサスペンスでもホラーだっていい。 今より拳銃撃ちやすいし手に入りやすいよ? そ

          『女神の標的』1巻

          『リップサービス』1巻

          長身美脚眼鏡美人が男を蹴ったりコスプレしたりする。 以上。 まぁそういうのが読みたいから買ったし、実際そうだったんです。 絵はキレイです。美人さんがちゃんと美人です。 だったら何も問題ないんじゃないかと思うんですけど、にしてもお話がなんじゃこりゃ過ぎて。 主人公は探偵事務所の秘書。で、探偵に惚れている。 んだけど、まずなんで惚れてるのかがわからん。きっかけの話とかなくて設定がそうなので。 せめて「まぁこれは惚れるか」って思うような超カッコいいスーパー探偵ならいいんですけ

          『リップサービス』1巻

          『胚培養士ミズイロ』5巻

          一色室長の話、ヘビーなの来るかと思ったらむしろコメディ寄りのライトなやつで意外というかなんというか。 ただヘビーなの持ってるだろうから今後どうなるのかな。 そして新しく始まった「お迎え編」がまたきっついやつで。 『「ヒト受精胚」は生命として定義されていない』 って、確かにそうなのかもしれないけど、実際に言葉として明確化されているとドスンと重い。 「それが生命であるかどうか」って物凄く深くてエグい話だと思うけど、それを決めなければ仕事にならない。という点で胚培養士が主人公

          『胚培養士ミズイロ』5巻