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蟻を見つめていた頃

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20年前に書いたエッセイ。一部加筆修正。 ★は2017年以降、新たに書き下ろしたエッセイ。
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#エッセイ

★教育という営み

★教育という営み

「校長のパワハラと闘っています」と人に話すと、「とてもアグレッシブな方ですね」「パワフルですね」という反応が返ってくることが多い。

しかし、私自身は、人よりアグレッシブであるとか、パワフルであるという自覚はまったく無い。というか、元気なときも、たまにあるが、落ち込むことも多い。ごく普通の人間である。

ではなぜ、校長のパワハラと闘うのか?というと、「許せないから」である。

それは、自分に対して

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★人柄の善し悪しと仕事の能力

★人柄の善し悪しと仕事の能力

「あの人は性格が良くて仕事ができる」こんな人がいたら、文句のつけようがない。

普通の職場には「性格は悪いけど仕事はできる」人と、「性格は良いけど仕事はできない」人が多く存在する。

周りを見渡して見ると、日本人は、他人を判断するとき「仕事の能力」よりも「人柄の善し悪し」の方に重きを置いているのでないかと思われる。利害の伴わない友達同士ならばそれで良い。長く付き合っていく上で、最重要ファクターは人

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★国語科教師の本分

★国語科教師の本分

国語科教育とは何か?私は、大学卒業以来30年間、国語教師として国語を子どもたちに教えてきた。国語を英語に翻訳するとjapanese。つまりは、中学生に30年間、日本語の授業をしてきたのである。

そして、今もって、「国語の授業は、他の教科に比べて、指導法があいまいで、教師の力量(教え方の善し悪し)に左右される」教科だなと感じる。数学や英語、理科、社会は、教師が変わっても指導法が180度違うというこ

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★「楽しく生きる」か「楽に生きる」か

★「楽しく生きる」か「楽に生きる」か

皆さんは、「楽しく生きていますか?」と質問されたとき、自信を持って「はい!」と言いきれるだろうか。

私の周りの多くの人は、「本当は○○がやりたいのだけれど、それでは食べていけないので、何となく今の仕事を続けています」と答える。つまり、「楽しく」生きるよりも「楽に」生きる道を知らず知らず選択している。あるいは、選択しなければ生きていけないと、思い込んでいる。

彼らに「人生やりたいことをやって生き

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多数決の恐怖

多数決の恐怖

★この文章を書いてから20年。全く進歩が感じられない世の中に愕然とする。先日行われた衆院選。多数決が出した結果は、前政権の継続である。私はこれが最良解であるとはどうしても思えない。

無関心は民主主義を麻痺させる。投票率が50%に満たない選挙では真の民主主義は機能しない。政権与党はそれが分かっていてあえて何も手を打とうとしない。60年、70年安保の時代。多くの大学生が政治に反発して行動した。今より

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★温故知新

私が好きな諺に「人間万事塞翁が馬」と「禍福はあざなえる縄のごとし」がある。

どちらも。「幸不幸は交互に訪れる。幸福が不幸の契機になったり、不幸が幸福の入口になっていたりする。その只中にいる時には分からない」と言う意味である。

この三日間、10年ぶりに持病の発作(と言っても命に関わる病気ではありません)で休んでいる。10年前に初めて発作が起きたときは、学校では無く教職員研修センターで研究生という

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★宗教と人間 ~創価学会考~

★宗教と人間 ~創価学会考~

私の叔父は創価学会員である。幼い頃から叔父は仏法の話をしてくれた。教員になってからも、折伏を受けた記憶がある。

私が小学校3年、4年の時の担任も熱心な創価学会員である。やはり何回かお誘いを受けて、若い頃は集会にも参加した。「創価学会という宗教の本質とは何か?」を知りたかった。

一度、巣鴨の大講堂に行ったことがある。200畳はあろうかという広間に、信者がびっしり座っている。壇上に久本雅美氏が登場

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★思考フレーム

★思考フレーム

人は誰でも、今まで生きてきた経験に基づいて、おのおの思考のフレームを持っている。経験は人生の長さに応じて増えるので、年長者は若年者より比較的広めのフレームを持っているのが「普通」である。

しかし、これは、あくまで「普通」なのであって「絶対」「必ず」ではない。人の中には、自分に厳しい経験を糧にして自己研鑽できる人と、他人のせいにしてスルーしてしまう人がいる。前者は常に成長を続けて思考のフレームを広

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★慇懃無礼(いんぎんぶれい)

★慇懃無礼(いんぎんぶれい)

 慇懃無礼とは、言葉や態度などが丁寧すぎて、かえって無礼であるさま。あまりに丁寧すぎると、かえって嫌味で誠意が感じられなくなるさま。また、表面の態度はきわめて礼儀正しく丁寧だが、実は尊大で相手を見下げているさま。

 私は約30年教師をしている。学校で働いている限り、あまり、慇懃無礼な人物に出会ったことがない。しかし、役所で働いたとき、あるいは、役所の人間と関わるときに、慇懃無礼な人物に遭遇する確

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★次元上昇を阻むもの

★次元上昇を阻むもの

 本田健さんのセミナーに行ってきた。今回で三回目。テーマは「次元上昇」について。

 社会で成功を収めている人は、それまでの人生で何度か次元上昇を体験している。次元上昇とは今まで生活していたレベルから一つ上のステージへ引き上げられる現象である。日本の平均サラリーマンの生涯年収は2億円程度と言われている。それ以上の収入を望むなら、"普通”の生活をしていては難しい。

 次元上昇に伴い、物事の考え方が

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★「以心伝心」神話

★「以心伝心」神話

 「以心伝心」という四字熟語がある。中学校の国語資料集に掲載されていて覚えたという方が多いのではないだろうか。「人は、親しい関係になれば、言葉にしなくても気持ちが伝わる」という意味である。

 「察する」「慮る」という言葉がある。「相手の行動などの様子を見て、気持ちを忖度する」という意味である。「以心伝心」と「察する」力があれば、最高の人間関係が築けるような気がする。間違いない。

 しかし、現実

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★道徳専門教師

★道徳専門教師

 区の道徳教育の研究会に参加した。

 私は、以前から道徳の時間の指導が大切だと思い、個人的に研究している。平成20年度には東京都教員研究生という制度を利用して、学校を離れ、東京都教職員研修センターに勤務しながら道徳指導の研究をした。研究テーマは「対話を重視した道徳指導の工夫-互いを尊重する豊かな話合い活動を通して-」

http://www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.j

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★人権感覚

★人権感覚

 12月4日から人権週間が始まった。教育界では「人権感覚」と言う言葉をよく耳にする。教師の「人権感覚」を高めるための研修が、東京都では、毎年2学期の終業式の後に行われている。

 「人権感覚」とは、人が生まれながらに持っている、何人からも侵されることのない「基本的人権」をきちんと理解し、様々な差別、例えば、女性蔑視、いじめ、障害者差別、外国人差別、最近ではLGBT差別、パワーハラスメント等、人権侵

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★組織的に機能できない学校

★組織的に機能できない学校

 学校は長く鍋ぶた型組織であった。校長、教頭の二人の管理職以外は、教諭という一段階の職層しかなかった。結果、長くその学校に在籍したり、年長のベテランだったりする教諭が、校長以上の権力を握り、学校を牛耳ってしまうという悪習が常態化していた。私が着任した平成2年頃の盲学校では、一人の事務職員が、職員会議で、儀式で日の丸を掲揚するか否かで校長に私見を述べ、会議を紛糾させていた。

 今から10年程前から

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