マガジンのカバー画像

はじめての小説

36
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

第四章新しい出会い #01心機一転

第四章新しい出会い #01心機一転

親が浪人することを応援してくれて、高卒で働くことを免れることができた。本当に親には感謝してもしきれない。知り合いの浪人経験のあるお兄さんが予備校などについて教えてくれることになった。お兄さんが勧めてくれた予備校と大手の予備校の両方を見学し、最終的にお兄さんが勧めてくれた方に通うことにした。やっぱり信頼できる人の意見の方が信じられる気がする。

同級生はほとんど大学へ進学し、友達ができなくてトイレで

もっとみる

第三章 大学受験 #03どん底まで落ちて

自分でもよく分からないけど、念じれば奇跡は起こると思っていた。内藤くんの時みたいに。でも、現実はそんなに甘くなかった。

推薦入試はボロボロ、センター試験は受けた学部すべて不合格、残すは一般入試。正直ここまで来ると自信はない。ただ最後の試験が終わってから、結果発表までに微妙に日にちがあるのが何ともいえない。何していいのか分からない時間がただ過ぎていった。そして、最後の結果発表の日。結果は、さんざん

もっとみる
第三章 大学受験 #02期待と現実と

第三章 大学受験 #02期待と現実と

受験まであと2ヶ月。時が経つのが早すぎる。焦りは増すばかりだが、やる気が起きないのが不思議だ。でも、周りの人たちは応援してくれるのだからありがたい。バイト先の澤部さんは、相変わらず話が続かないけど、「佐藤ちゃんには受かってほしいなぁ。がんばってね。」と言ってくれた。うれしい。そう、いつの間にかバイト先ではみんな私のことを、佐藤ちゃんと呼ぶようになっていた。何だか距離が近づいた気がしてうれしい。岩井

もっとみる
第三章 大学受験 #01些細なしあわせ

第三章 大学受験 #01些細なしあわせ

高2が一番楽しいよ、とさんざん言われていたので、高3になるのが惜しい気がした。あっという間に高2が終わってしまったな。いよいよ受験生。勉強もバイトも恋もがんばるぞ!と妙に意気込んでいた。一瞬のしあわせが欲しくて、コロコロと好きな人は変わって、常に誰かにきゅんとする日々。名前を呼ばれた、おはようって言ってくれた、誕生日おめでとうメールがきた、目が合った、新しいセーターの色を褒められた、そんな些細なこ

もっとみる
第一章アルバイト #03まかない

第一章アルバイト #03まかない

仕事にも少しずつ慣れてきた。相変わらずみんな優しい。私が一番嫌いだった天ぷら売りの仕事は幸運なことに無くなることになった。売り上げが悪かったのか、売り場自体がなくなるらしい。私のせいじゃないよね。

蕎麦屋というのは、結構常連客というのがいるもので、代々受け継がれているノートに常連さんの情報が事細かに書かれていた。いつもかけそばを頼んで1分もしないで食べ終わって帰っていく人。この人はせっかちだから

もっとみる
第二章あの頃 #05念じれば

第二章あの頃 #05念じれば

失恋した、と言ってもすぐに忘れられる訳でないようだ。内藤くんの姿が見えれば見てしまうし、内藤くんの誕生日には「お誕生日おめでとう」のメールを送ってしまう。あの頃は、LINEなんていうものもなかったからメールをしても読んでいるのか読んでないのか分からないし、返ってくるかどうかやっぱりドキドキしてしまう。内藤くんのバイト先は、うちの近くにあるマックだったから、学校帰りにわざと遠回りをしてマックの前を通

もっとみる

第二章あの頃 #04目撃

見てしまった。私は見てしまった。その日の帰りは、たまたま一人で駅に向かっていた。ホームに着いて、ふと学校の方を見ると内藤くんが歩いていた。そう、歩いていた、女の子と。目が悪くてよく見えなかったけど、たぶんあれは同じクラスのサヤちゃん。はい、失恋決定。ただ2人で歩いていただけだし、2人が付き合ってるなんて分からないはずなのに、何だかイヤな予感がした。実際、あとで聞いたらその2人は付き合っていることも

もっとみる
第二章あの頃 #02内藤くん

第二章あの頃 #02内藤くん

好きな人がいる、というだけで急に毎日が楽しくなる。恋は偉大だ。内藤くんは、高1の時に同じクラスで高2になってクラスが分かれてしまったのだけど、すれ違えば挨拶するくらいの仲だった。バンドをやっていて、ギターが上手だった。しかも部活はバスケ部。運動もできて、音楽もできる、しかも優しい。完ぺきだ。親友のユウコにだけは、好きな人のことを話してたし、相談していた。ちなみにユウコは、いつも電車で一緒になる先輩

もっとみる

第二章あの頃 #01イメチェン

小さい頃から自分に自信がなかった。いつだって変わりたいって思ってたのは、きっと自信をつけたかったからなのかもしれない。自信がないと言っても、興味をもったことはとりあえずやってみようとしてきた。小学校の頃は、男の子にケンカを売られたら果敢に立ち向かっていっていたし、児童会役員もやったりしていた。リーダー的なものに憧れていたんだな。中学校に入ると少し猫をかぶって、おとなしくなった。吹奏楽部に没頭して、

もっとみる
第一章アルバイト #04バイト先の人たち

第一章アルバイト #04バイト先の人たち

バイトは週2日だけど、少しずつ行くのが楽しみになってきた。一緒に働く人がいい人だと、仕事が大変でも頑張れることを知ったのはこの時だったのかもしれない。自分より年上の人たちと関わるようになったのも、この時が初めてかな。

店長のナルさんは、元気なおばちゃん。いつも明るくて、調理場でバリバリ働いていてかっこいい。みんなの母ちゃんという感じで頼れる存在だ。フリーターの高田さんは23歳、茶髪のちょっとチャ

もっとみる
第一章アルバイト #01蕎麦屋

第一章アルバイト #01蕎麦屋

高2の春。そろそろバイトしたいなぁと漠然と思っていた。定額制のお小遣いというのは昔からもらったことはなかったし、ほしい時にもらうという方式だったので、自分で自由に使えるお金がほしかった。短期のバイトはしたことがあったけど、ずっと続けられるものをと思って同じクラスのタンちゃんに相談したら一緒に探してくれることになった。駅に隣接したデパ地下の蕎麦屋は、週2日からOKで仕事内容もまぁ簡単そうだったので電

もっとみる
第一章アルバイト #02天ぷら

第一章アルバイト #02天ぷら

ドキドキ最高潮で迎えた面接は、意外にもあっさり終わった。「とにかく大事なのは大きな声で元気に挨拶すること。そこは厳しくいくから。じゃあまた!」店長らしきおじさんそう告げられ、はじめてのバイトが決まった。大きな声を出すことが苦手な私は、急に不安になりながらも、バイト決定というちょっとした達成感も感じていた。

店長らしきおじさんは店長ではなくて専務で、ほとんど店には来なかった。主なメンバーは、店長と

もっとみる