第二章あの頃 #04目撃

見てしまった。私は見てしまった。その日の帰りは、たまたま一人で駅に向かっていた。ホームに着いて、ふと学校の方を見ると内藤くんが歩いていた。そう、歩いていた、女の子と。目が悪くてよく見えなかったけど、たぶんあれは同じクラスのサヤちゃん。はい、失恋決定。ただ2人で歩いていただけだし、2人が付き合ってるなんて分からないはずなのに、何だかイヤな予感がした。実際、あとで聞いたらその2人は付き合っていることも分かった。恋は儚い。ユウコには、そのことは特に話さなかったけど、内藤くんのことを話さないようにしたことで何となく匂わせた。そこを感じとってくれるあたり、さすがユウコだ。

小学校以来の恋だったけど、高校生で恋できるって青春ぽくていい。青春できてよかった。失恋したあとも、何人か好きな人は入れ替わって、相変わらず友達と恋バナは尽きなかった。あの頃は、誰が好きとかかっこいいとなそういう話するだけで楽しかった。内藤くんのあとは、剣道部の部長であり生徒会の会長の鶴川先輩を追いかけていた。あだ名は会長。会長を好きな子は何人かいて、その子たちと一緒に追いかけるのも楽しかった。会長が卒業する時には、何とネクタイをゲットした。第二ボタンは他の子が予約してたからもらえなかったのだけど、ネクタイの方が私は嬉しかった。しかも卒業式の日、私を見つけると会長の方からこちらに歩いてきて「はい、コレ。」と言ってネクタイを渡してくれた。かっこよすぎるでしょ。会長が卒業したということは、私たちももうすぐ高3になろうとしていた。

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