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2023年9月の記事一覧

まんまるおつきさま

まんまるおつきさま

あかるかったんだ
いつもよりずっと
うえをむいたら
えにかいたような
おつきさま

かなしくてないていたような
きみとけんかしてしまったような
くるしいなあなんて
けっとばしたこいしが
こつんとじぶんにもどってきたような
さみしいよるだとおもってたんだ

しずかなおつきさまがいて
すずしいかぜがふいて
せかいのどこかで
そばにいないだれかも
ただそらをみあげてるのかなっておもったら

ちょっとだけ

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真実のような顔をして

真実のような顔をして

僕の脳内に現実が流れ込む
僕の2mmほどの皮膚はフィルターと化し
少しばかり現実の解像度を下げて
僕が傷つかないように
ささやかに気を遣う

僕の脳内から妄想が溢れ出す
じわじわと滲み出すように
解像度の高い妄想が
にじりにじりと現実を
侵食していく

僕は脳内で全てをないまぜにする

攪拌し
攪拌し
攪拌し

酢と油のように
混じるはずのない現実と妄想が
僕を介して乳化され
いつの間にかドロドロ

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daydream

daydream

アナウンサーは
いつものように笑っている

うつむくまつ毛は
エリザベスさながらで
オリンピアの戦士を讃えている

感染する
気味の悪い価値観を
くびれた腰に巻きつけて
原稿どおりの
言葉を吐き続ける

囁くような
静かな声で
すみませんと聞こえた気がした

世界の切り取り方が
想像していたものと違うんです
玉の輿に乗りたかっただけなんです

挑発的な言葉尻は
つまらないセリフなんです
てにをはさ

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かさぶたも、飲み込んで

かさぶたも、飲み込んで

かさぶたがポロリと剥がれた

「大人になるってそういうこと」
憧れのあの人の声が聞こえた気がした

傷ついて
悲しんで
涙して
落ち込んで

立ち上がって
前を向くしかなくて
そうでなければ
生きていけないから

「大人になるってそういうこと」

傷跡は少し白く
その皮膚はまだ生まれたてで
これから日に焼けて
周りに馴染んでいくのだろう

「大人になるってそういうこと」

それなら大人になんかなり

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うつむいた先の手には、小枝。

うつむいた先の手には、小枝。

「何しよーと?」

うつむいた息子の手には、必ず小枝があって。
その小枝で地面にお絵かきをしていた。

私も一緒になって、その小枝で絵を描いて。

さらさらとした黄土色の土を、小さな小石を、掻き分けるように、小枝は進む。

我が名はモーセ。
振り下ろした小枝が、公園の土を割ってゆく。
息子の喜ぶ顔が見たくて、右に左にと小枝はゆく。

アンパンマンにバイキンマン。
なぜかカレーパンマンは上手に描けな

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romanticist

romanticist

アイスクリーム
いちごのケーキ
ウイスキーボンボン
エクレアに
おおばんやきに
カスタードプリン

君のうちまで届けよう
くつのかかとを2回ならして

ケーキが崩れないように
ころばないように
桜色の大きな紙袋に
しっかりしまって

スケジュールは確認した
青天の霹靂が起きない限り
そっと運べば大丈夫

たのしみに待っている
ちょっとだけラフな格好の君に
月が綺麗ですねって
手をぎゅっと握って

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夕焼けも、朝焼けも。

夕焼けも、朝焼けも。

「いってらっしゃい」

ドアを開けて、夫を送り出す。
我が家の玄関は東向き。

たまに、ドアの向こう側から、近所のマンションの隙間をぬって、朝焼けが顔を出す。

朝焼けが見れた日は、すごく気持ちがいい。
得をした気分になる。

朝焼けは雨、なんて言うけど、気にしない。

雨は降る時は降るし。
雨が降らないと困るし。
雨が降ったら、傘をさすか、レインコートを着ればいいだけのこと。

そんなことより、

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詩|monochrome

詩|monochrome

あいちゃんは
行ってみることにしました
生まれて育った家に

遠足気分でたどり着いた家には
思い出がいっぱいありました

かえるの鳴き声
綺麗な星空
草のにおい
喧嘩したこと

子どものころの思い出がいっぱいです

寂しいできごともありました
しあわせなできごとを
少しだけ
背中を
そっとおすように思い出しました

立ち上がればこんなに色んなものが
小さかったのだろうかと思いました

冷たい水で

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詩|あのこのふうせん

詩|あのこのふうせん

ふんわりと
あの子の願いを
乗せて、風船は飛んで
いく。赤や黄、青や緑。色
とりどりの風船はいったいどこ
まで旅するのだろう。川を越え
山を登り、海を渡り、どこま
でも飛んでいく。あの子
はいつまでも手を振
って、お願いご
とが叶う


 日

 待



詩|tomorrow

詩|tomorrow

あしたに
いろをつけよう
うんとすてきな
えのぐで

おもいのままに
カラフルに
きれいじゃなくてもいい
クレヨンでもいいよね

けしごむで
こすってもきえないぐらいえがこう

さっそうと
しずかに
すずしげなかおしてあしたはやってくる

せなかばかりおいかけそうになるけど
そんなのごめんだ

たまには
ちょっとくらいだけでも
つまさきだけでもおいぬきたい

てをたたいてよろこんで
とまったしゅん

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詩|影とダンスを

詩|影とダンスを

私は影を見つめる

私の足元に落ちた影を
踏み潰し、連れ回す

日が昇ると、次第に影は小さくなる

私は影があったことさえも
忘れてしまう

あちいあちいと日陰を探し
無機質な影にすっぽりと包まれ
ほうと一息安堵する

夕暮れに影が伸びる
私はおかえりと言う

踏み潰して、連れ回して
なんだか要らぬもののように
扱ってきたのに帰ってきた

懐かしい友との再開に
私は橙色のスポットライトを
浴びてダ

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