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日本修行編 第13話

日本を感じる...


そこは、岐阜県の瑞浪市という中心からかなり離れ、景色も空気もいい山を少し登ったところにある。
名古屋市内にも支店を構えているらしいが、全国のフーディと自称?呼ばれている食いしん坊の人たちはこぞって、ここ本店に通っている。
食いしん坊の僕も、地方の特にジビエで有名なお店はずっと行ってみたいと思っていて、今のところ唯一食事することができたお店の1つである。
同じく岐阜県にあるかたつむり、滋賀県の比良山荘徳山鮓などと、交通の弁は決してよくないが、いずれも食べログ高得点や雑誌などの影響もあり予約困難というか、もはや予約不可能に近く、僕もまだ伺うことができていない。

柳家

ここ、柳家は最低4名以上、個室の利用のみで旬の食材を部屋の中心に備えられている囲炉裏でオリジナルのタレや塩で調理される。
いわゆる炉端焼き

春は山菜、夏は鮎、秋はキノコそして、冬は熊などのジビエと日本の四季の豊かさを味わうことができる。
伺った日は夏から秋にかけて、子持ち鮎に松茸、鹿肉と名残と走りをご主人自ら焼いていただき堪能させていただいた。
それだけでなく、常連のお客さんと特別なお客さんには、写真も口言もNGの地元ならではの1品も運が良ければ経験することができるかもしれないかもしれない。

確かに、珍しい食材を経験することができるけれども味一点だけを見てしまうと、炉端焼きというシンプルな調理法、わざわざ岐阜の奥地に来てまで食事する必要があるのか疑問に思う人も多いだろう。
けれども、地方の山や川、海の側に住んでいる方や、そういった環境で育った方には当てはまらないかもしれないけれど、都会の喧騒に日々飲み込まれている人たちには店へ着くまでの道路、囚われている文明の危機から解放されたいっときは心を動かすものがあると思う。
現に、僕たち年齢もジャンルも違うけれど、囲炉裏を囲んだひとときは楽しかった。

翌日、僕たち一行は林さんと別れを告げ、岐阜県が誇る歴史的芸術作品を今もなお魂ととともに打ち続けている礼頂の小林弘樹さんのもとへと伺った。

そう、岐阜と言えば日本刀、包丁で有名な関がある。
僕は、小さい頃からフツーの男の子らしく刀や銃器が大好きで、今でも時間を見つけたら常に刃物を研ぐといったフツーの習慣を持っている。
刃物を研いでいると精神も一緒に研がれているような気持ちになる

小林さんには、包丁の製造工程や材質、想いとたくさんのことを教えていただいた。一緒に行った若手の子たちはそこで生涯の包丁も購入した。
料理人の包丁というのは決して安いものではない、特に魂込めて打たれた包丁は斬れ味はもちろん、丁寧に手入れをし使い続ければ一生ものだ。

僕は、グランメゾン東京の木村拓哉さん演じた尾花が使っていた包丁でも話題になった福井県の高村刃物製作所の高村さんの包丁を7年前にたまたま合羽橋で見つけ、使い続けている。

だいぶ短く、細くなってしまったが、こう使い続けていると柄の部分は手に馴染みもはや身体の一部のようだ。
包丁の斬れ味というのは、文字通り"味"に影響する
だからこそ、お刺身という料理が成り立つということもある。それだけでなく、大根はリンゴのように味は変わる。
食材を殺さず活かす太刀筋は、料理を何倍にも美味しくさせる。
僕は、自分のスタッフにもよく言っていた言葉の1つにエシャロット1つ切るのにも神経を研ぎ澄ませろと。
フランス料理のソースやソースのベースとなる出汁を取るのにエシャロットという野菜をよく使うのだけど、エシャロットの切りかた1つで仕上がりの味も香りも全く変わってしまう。
料理というのは、そんなにも繊細な代物である。
特別に難しい技術を使ったり、派手な演出よりも、そういったひとつひとつがおいしさへと繋がり、感動を生むのではないかと僕は信じて仕事をこれからもしていく...

To be continued... 

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