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【ポストカード物語】円窓から楽しむ夏の風景
京都で下車すると、雨が降っていた。
せっかくの一人旅なのにと天気も心も浮かない。
仕方ないのでしばらくぶらぶら歩いていると、紫陽花がたくさん咲いている花園にやってきた。
そこには色とりどりの紫陽花が咲いており、花びらに乗った水滴はそれらをより一層輝かせた。
この景色が見れたのなら雨でも悪くなかったかもしれない。
同居人のことを思い出して少し勝ち誇った気分になった。
彼女とは小学生の頃からの幼馴染で、幼少期から仲が良かった私達は自然と大人になってからも一緒にいるようになった。
くだらない喧嘩で家を飛び出して東京から青春18切符で京都まで来たと知ればまた呆れられるだろう。
でも今日は気分転換をするためにわざわざ始発で電車に乗り、京都まで来たんだ。
旅の間は気にしないことにした。
しばらく歩いていると京都らしい建物が見えた。
ちょうど雨を凌ぎたかったし、300円なら安いもんだろう。
傘を畳んで中に入ると、雨の湿気と木材の入り混じった香りがした。ほのかに畳の青い匂いもしてどこか懐かしさがある。
京都で生まれ育ってもないのにどうしてこの街はこんなにも落ち着くのだろう。喧嘩の時に抱えてた怒りや興奮もこの香りに包まれて柔らかい気持ちに変化した。
ふと目の前に円窓があることに気づく。
覗き込むと先程の紫陽花がここから青い絨毯のように一面に広がっていた。
あの子にも見せたいな。
意地張って一人で飛び出して来たことを後悔する。
ふと近くの紫陽花に目をやると、小さな小さなカエルが葉っぱに大人しく、しかし威厳のある面持ちで鎮座していた。
意地張ってる自分と重なり、なんだかその様子が可笑しく帰ったら謝ろうと思った。
この風景をなんて形容しよう。
友人と違って言語センスも何もない自分はただただ素直に景色を表せばいいか。
「円窓から見る夏の風景」
終。
こちらのポストカードをモデルに短編作品を書きました。8/31まで販売しています。ぜひ大切な人に贈ってみてください。
※すみませんこちら8/28で販売終了したようです!小説だけでもお楽しみください!
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