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DJシステム完全お引っ越しマニュアル (7)

鬼の居ぬ間に洗濯、ならぬ、客の居ぬ間に試し打ち。

関西某所の某家電量販店。主宰は逸る気持ちをついに抑えることができず、昼食のテレワークだかテレマークだかテーブルマークだかの焼き飯600gを片手に(勿論マイバッグに入れて)白昼堂々Appleコーナーに立ち寄る。店先で念入りに手先指先までしっかりとアルコール消毒。足早にエスカレーターを駆け上がり、物陰から客足が途絶えたタイミングを見計らって、いざ突入。

メタルギアソリッド最新作。30分以上の滞在は1接触とみなされるのが「3密対策」の基本です。時間は本当に限られている。はからずも店員さんが持ち場を離れる瞬間と見事にユニゾンを果たす。人っ子1人居やしねえ。それはそれで逆にどうなんだという疑念も別にないではない。しかしこちとら好都合、Win-WinならぬWin-Win-Win-Winくらいの心持ちである。

抜き足差し足忍び足が果たして店内の防犯カメラにどう映し出されていたのかはもはや知る由もない。予め決められた種々の行程を、人の心を持ちながらしかしあえて機械のように、粛々とこなすだけのミッション。人の手を拒み、たった一人自分自身の力で。愛と希望と勇気を胸に。わずか600gほどの冷凍チャーハンが6000gにまで感ぜられずっしりと重い。

エアリーとクリエイティブが、正方形のテーブルを挟んでがっぷり四つ。傍らには巨頭とその上位モデルの姿もある。スクリーンセーバーが立ち上がってから果たしてどれだけの時間が流れただろうか。繰り返しますが、人っ子1人居やしねえ。DVIケーブルをくすねたあの日も、確かこんな風だった。静寂の中を冷凍チャーハンの具材達がガサガサと音を立てて揺れる。

ふと我に返る。冷凍チャーハンだけではない、マウスウォッシュも買った。確かに買った。でも詳しいことははっきりと覚えていない。ベルトコンベヤーに乗せられるかの如くレジに並び、自動釣銭機まで歩を進め、足早に店を出た。こうしてみると意外とはっきり覚えている。気付くとエアリーの前に立っていた。その間、果たしてどれだけの時間が流れただろうか。

とても平時ではない。40近い都道府県で緊急事態宣言解除、とはいってもだ。冷静な判断とは何か。そもそも冷静でいられたことなどあったのか。給付金は未だ手元にない。でも心の中の給付金は、難しそうなのでこの話はやめよう。ふと我に返る。今ここは自分のあるべき場所ではない。Go Home。Stay Home。結局試し打ちしたのかどうかすら、記憶はおぼろげだ。

この物語はフィクションです。次回へ続く。

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2020.05

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