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黄金の荒野を拓く@宇宙ビジョン作家人響三九楽(ヒビキサクラ)
2020年10月30日 16:56
私がここにいる意味は、きっときっとある和宮様の兄上に当たる孝明天皇は、攘夷派で外国からの進出を阻止しこの国を守る意思がお強い方だった。その思いから、ご自身がお決めになった妹の和宮様の婚約を破棄してまで、家茂様に嫁がせたのは、徳川幕府を倒すためではなく幕府と力を合わせ、外国から日本を守るためだった。「兄上はご自分の意見をしっかり持った方ですが、とても穏やかでやさしい方です」和宮様は、私
2020年10月23日 22:13
小我を手放した時、大我はその姿を現す和宮様は、御所風のやり方を大奥で通せるように私をコントロールしようとし、私はこれまでの大奥でのしきたりややり方を通せるよう和宮をコントロールしたかった。私達はお互いをコントロールしようとしていた。何年も後に「あの時は私達、火花バチバチですごかったわよね~!」と笑い合っていたけど、当時はそんな余裕なんてなかった。どちらも自分がマウントを取りたかった。
2020年10月22日 17:19
嫁と姑のひそやかな戦い初めて嫁となる和宮様を見た私の印象は・・・「お雛様か!!」だ。和宮様は、まるでお雛様のように絵巻物から現れたお姫様だった。雅なお顔立ちに、小さなお身体。精巧に作られた手の込んだアンティークドールのようだった。私達武家の女とは、まったくちがうイキモノ。瞬きもせず、無表情だった。家茂様も初めて顔を合わせた時、一瞬驚いていた。が、家茂様はやさしく彼女に微笑んだ。
2020年10月20日 19:12
生まれ育った環境が創るものやがて江戸城に慶福様が入ってこられた。私と家定様の養子、という形で、名前も徳川家茂に改められた。「お義母上様、家茂でございます」そう言いながら、彼は頭を下げた。息子、というけれど彼は十三歳で、私は二十二歳。息子、よりも弟、という感じだった。聡明で年齢よりも落ち着いて見えた。今後私は彼を支え徳川家を守っていくのだ、と背筋を伸ばした。家定様亡き後、私は落飾し
2020年10月16日 21:54
あなたは本物のソウルメイトです私と家定様が一緒に過ごした時間は、両手からサラサラと流れていく砂のように儚い夢のような時間だった。わずか二年足らずの結婚生活。けれどこの二年間が私を強くし、私を変えた。「もし私がこの世を去り、今度菓子職人として生まれ変わっても、私の妻でいることを。私の作った菓子を食べ、笑っていることを。いつまでもずっと私のそばにいることを」そう家定様と私は約束をした
2020年10月14日 18:45
幸せは与えられるものではなく、自らが作り出すもの安政四年六月に、家定様が政を任せていた老中の阿部正弘が死去した。その後は同じく老中の堀田 正睦に託した。阿部正弘は、時期将軍争いに関してお義父上様と同じく一橋慶喜様を押す一橋派だった。彼を失った一橋派は、力を弱めていった。今まで一手に政権を握っていた阿部正弘を失ったことで、幕府の吸引力は低下し、これまで影に潜んでいた家定様も、表舞台に出
2020年10月11日 13:02
愛は態度だけでなく、言葉でも伝えたいこの時から、私は心から望んだものができた。家定様とのお子だ。私と家定様とのお子が産まれ、その子が男子であれば将軍の跡継ぎについて何の問題もなくなる。もし私にお子ができれば、家定様も未来に希望が持てるのではないか、と思った。「のう、幾島。もし私と上様の間にお子ができたのなら、義父上様も一橋慶喜様を推さず、私達の子を時期将軍へと推して下さるのではない
2020年10月8日 17:47
神様が用意した束の間のドルチェヴィータあれ以来、私と家定様の距離は縮まっていった。家定様は少しずつ、私に笑顔を見せてくれるようになった。阿呆を装った家定様は実はスィーツ男子で、趣味はお菓子作りだった。ある日、自分専用のキッチンに私を呼んでくれた。ドキドキして行った私の目の前にホカホカ湯気の立つ、黄色くて四角いものが出された。甘くていい匂いがキッチンの中に漂っていた。生まれて初めて見たお菓
2020年10月6日 18:34
私達は、運命という龍に選ばれここに来たその夜、私は寝所でふかふかの絹の布団に正座し、家定様を待った。胸のドキドキ鳴る音が聞こえそうなほど、緊張していた。部屋に入ってきた家定様はいつものように無表情だった。家定様も私と同じように布団に座ったが私と目を合わせない。それでも私は思い切って口を開いた。「今日、お母さまの本寿院様にご挨拶してまいりました」「ふん」家定様は、あごを上げ見下ろすように私
2020年10月3日 17:31
「あきらめ」を明らかに改めたい眠れないまま朝を迎えた。布団にじっとこもったまま横を見ると、起き上がり手を伸ばせば届く距離に、家定様はいる。が身体はそこにあっても、心は何億光年も離れている。天を衝くほどに高い木々に囲まれ、道もない大きく深い森の中でたった一人取り残されたような、とてつもない寂しさが私を襲う。これから私はどれだけの夜を、この大奥で過ごさなければならないのだろう?なんの希望も
2020年10月2日 16:24
眠れない初夜お式は緊張の内に終わった。家定様はお式の時に一度も私と顔を合せなかった。ずっと前を向き、視線をそらせていた。嫌われているかと思ったが、それはあとで違うことがわかった。けれどいっそ嫌われている方がましだったのかもしれない、と後で思い知った。家定様は私に何の興味もなかった。ただ御台所の地位が空いており、家臣や生母の本寿院様達にせっつかれ仕方なく私を迎えたようだ。チラッ、と見