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「ソウルメイト・ドラゴン~篤あっつつ~」第十八話 私がここにいる意味は、きっときっとある

私がここにいる意味は、きっときっとある

和宮様の兄上に当たる孝明天皇は、攘夷派で外国からの進出を阻止しこの国を守る意思がお強い方だった。
その思いから、ご自身がお決めになった妹の和宮様の婚約を破棄してまで、家茂様に嫁がせたのは、徳川幕府を倒すためではなく幕府と力を合わせ、外国から日本を守るためだった。

「兄上はご自分の意見をしっかり持った方ですが、とても穏やかでやさしい方です」

和宮様は、私にそう告げた。
孝明天皇は、徳川に嫁ぐのを嫌がる妹に、何度も繰り返し
「この国の未来を守るために、徳川に嫁いでほしい」
と頭を下げたそうだ。
「公武合体」は、徳川幕府も天皇も望んだ形だった。

ところが時代の大きなうねりは、その流れを許さなかった。
和宮様が嫁いできた二年後の1864年
外国の脅威をわかっていない尊王攘夷派は、武力で譲位しようとしていた。
その筆頭が、長州藩だった。
過激な尊王攘夷派である長州は、自分達こそが天皇の味方、とばかりに天皇の意思をまちがった形で都合よく受け取り、禁門の変、という争いを起こした。京都の町は火に包まれ、罪のない人々がたくさん家や命を失った。
暴走した長州藩を食い止め打ち取ったのは、あの西郷が率いた薩摩藩、そして会津藩だった。

その知らせを聞いた私は、怒りで震えた。

和宮様が命を賭け、徳川に嫁いできた意味がわかっていないのか!!
孝明天皇のご意思を都合よく取って、何をしているのか!!

やがて家茂様は、長州征伐のために出陣することになった。
和宮様は涙を流しながら、家茂様を見送った。

「私が徳川に嫁いだことなど、長州にとっては何の意味もなかったのでしょうか?
どうして私達の正しい思いは、伝わらないのでしょうか?」
和宮様は泣きながら、私に訴える。私は泣き崩れた和宮様の背中にそっと触れた。
「和宮様、私も悔しいです。腹立たしくてなりません。
が、私達がそうであったように、自分の常識は人の非常識。
長州の者たちも、そう思っているのでしょう。
 己がすることだけが、正しい、と信じているからこそ、命をかけて争うのでしょう。
なんと愚かなことでしょう。
この国の未来を思う気持ちは同じでも、そこに伴う気持ちは私達と大きな隔たりがあります。
和宮様、祈りましょう。
この国の良き未来のために。
家茂様のご無事を。
今、成すべきことをやりましょう」

私達は涙をふき、正座し手を合わせた。今の私達にできる精いっぱいだった。長州を鎮圧したものの京都の町は三日間も燃え続けた。さらにたくさんの家屋敷が失われ、路頭に迷う人々が町にあふれた。
長州藩は、朝敵として息の根を止められて当然だった。
いや、息の根を止めておくべきだった。
それをさせなかったのが、時代に背を押されたあの男・・・・・西郷だった。

日本の未来はあの男によって、私達の思惑を外れ流れていった。
今振り返ると、それが天のおぼしめしだったのだろう。
それでよかったのだろう。
けれど、運命、という名の龍が日本の未来をどこに運ぶのか
この時の私達は何も理解できなかった。
見えていなかった。

私は何を祈ればいいのか?
私に、何ができるのか?
わからないが、ただただ信じよう。
この国の明るい未来と平和を。
民の笑顔と幸せを。

私がここにいる意味は、きっときっとある。
そう信じたい。いや、そう信じる。

時代の転換期、という大きく口を開いた龍に私達は飲み込まれていく。


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