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男の子、女の子。

12
恋とか愛とかしたかった。
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#短編小説

この一言が終わりになるかもしれないことは気づいていた。

この一言が終わりになるかもしれないことは気づいていた。

「煙草、吸うんだ。」

背中に張り付いた時に、香水に混じって独特の匂いがした。嗅いだことのある、誰かが吸ってた煙草の匂い。
私が尋ねると、あなたはもごもごしながら、「やめられなくなっただけだよ、若気の至り。」と、遠くを見つめて答えた。
その瞳に私は映っていなかった。もしかしたら、いつもその瞳に私は映っていなかったのかもしれない。

初めて煙草を吸っているところを見たのは、朝焼けが綺麗な時間。ベラン

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「親指、すごく曲がるんだね」

「親指、すごく曲がるんだね」

ちょっとした癖まで知ってるのに、
あなたと私は付き合ってない。

足と手の親指がひどく反り返る。
私だけが知っている秘密にしておきたい。

横になって、見える足先。指。
親指だけ力がぐっと入ってるみたいに、
他の指より反っている。
手の親指もそう。
ふと広げた時に、ぐっと反っている。
親指だけ。

それに気づいているのが私だけならいいのに。

そう思うから、言えないでいる。
何気ない会話の時に、

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お前の幸せだけは祈らない

「早く野垂れ死んだらいいのに」
そう呟いてスマホを置いた。大嫌いな男はまだしぶとく生きているようだ。

その男は、半年前にこう言った。
「飽きたから別れてほしい」
平日、昼間のサイゼリヤでの出来事だった。周りの卓はランチタイムで賑わっている。この卓だけ葬式のような静けさだった。いや、葬式の方がまだ音がある。ここだけ無音だった。
あまりの衝撃で言葉を忘れてしまった。突いて出たのは「ぁ…あぅ、あ?」

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目が合ったら考えてあげる

目が合ったら考えてあげる

この人は、いつもいつだって顔色が悪い。
箸を持っただけで指が折れそうだし、一度寝たらもう一生目を覚まさない気さえする。

…まあ、そんなことはないんだけど。
なんなら、今朝目が覚めてからずっとスマホとゲームコントローラーの往復を繰り返している。その横で目が覚めてから掃除洗濯、今はお昼ご飯の準備をしている私。掃除と言ったがするところがほぼない。大体いつもスッキリしている。この人の部屋が綺麗なのは、休

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天の邪鬼なふたり

天の邪鬼なふたり

朝か昼かわからぬ時間。

ばたばたとお風呂場へ向かう君。

朝シャンには遅いし、今日は特段汗をかくほど暑くはない。

窓からは心地よい風がふき、陽気もぽかぽかとしてる。

まるで青空の下にいるようだった。

僕は、また眠気に襲われぼーっとしていた。

すると、

「ねえ、このシャンプー金持ちのオバサンみたいな匂いじゃない!?」

君は、「嗅げ!」と言わんばかりにシャンプーを僕の鼻に近づけていた。

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