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【ショートショート】ビニール越し

 梅雨前線が、今年もよろしくと言わんばかりに本州に沿う。じとじととした梅雨がやって来た。

 雨は嫌いではないが、梅雨は嫌いだ。洗濯物を干せないのがどう足掻いても許せない。天気予報と睨めっこをして、今日なら干せると言う日を待つのが嫌いだ。いい加減乾燥機を買おうかと財布と毎年話し合うも、閣議決定された事はない。

 だが隣の彼は梅雨を楽しむ人だ。

「あっ、見てあれ。あの傘可愛いねー」
「子供用の傘も種類が増えたね」
「ほんと。俺が子供の頃にあんなお洒落な傘なんかなかったよ」

 反対車線の歩道。そこを歩く子供が差した傘。ラベンダー色がまるでどこぞのプリンセスのような、お洒落な傘。こちらは大の大人が二人揃って質素なビニール傘を差しているのが、少し恥ずかしくなった。
 しかし彼は子供の傘をお洒落だと褒めるくせに、自身はビニール傘から変えた事はない。

「このビニール傘じゃなきゃ、あの子供の傘がお洒落な事にも気付かなかったっしょ」
「そんなもんかなあ」
「そんなもんだよー」

 雨粒のひとつひとつさえ、彼には楽しむべきものらしい。



最近の子供の傘、お洒落過ぎない……???


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