『クメールの瞳』着想のお話
江戸川乱歩賞をいただいた後、僕は2作目の壁にぶつかり、「このまま乱歩賞史上初の一作で消えた作家になってしまうのでは」という未来予想図におびえていました。
そんな時、たまには普段と違うものを見てきたらと妻に促され、僕が訪れたのはそれまであまり馴染みのなかった東京国立博物館でした。
展示物を見て回っているうちに目に留まったのは、クメールの美術品。解説パネルには、『当館のクメール彫刻は、昭和19年、東南アジア文化の研究機関であったフランス極東学院との交換によって収蔵されたものです』