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『環境省武装機動隊EDRA』環境テーマについてのお話

デビュー作以来、史実と絡めた歴史冒険もの(ミリタリー風味やや多め)を書いてきましたが、『環境省武装機動隊EDRA』ではそのテイストも残しつつ、環境問題をテーマに取り上げています。

じつは、『環境省武装機動隊EDRA』には原案ともいうべき作品がありました。2014年の第60回江戸川乱歩賞で二次通過した作品がそれです(※1)。
その作品の「近未来、環境破壊がもとで第三次世界大戦が勃発、生存の危機に瀕した人類にとって環境保護こそが最大の正義となる……」という大まかな背景設定は生かしつつも、登場人物もストーリーもすべて変え、改稿ではなく一から書き直したのが『環境省武装機動隊EDRA』なのです。
なお元になった作品が三次で落ちた理由は、講評によれば「設定に関する説得力不足」でしたから(もちろん他にもあったと思いますが)、今回の執筆にあたってはその部分を徹底的につくりこんだつもりです。

僕は以前、自然保護NGOで働いていたことがあります(※2)。
大学卒業後にシステム開発の会社に入ったのですが、正直に言えばちょっと疲れてしまい、前から好きだったアウトドアに関係するような仕事がしたいなと思って転職したのです。自然保護を目的としたNGOに入るには、どちらかといえば後ろ向きな理由だったかもしれません。
そうはいっても、自然を守りたいという思いはそれなりにありました。
まだ二十代で、若手の職員同士、どうしたらもっと自然保護の考え方を世の中に知ってもらえるだろうなんて話し合ったりしたものです。
自然保護団体なんてまだまだうさんくさく思われている節もあるのだから、よく知ってもらうためにドラマにならねえかなあ、どうせなら月9とかで、そんで事務所で撮影してもらえれば●●(女優さん)にも会える、なんてアホみたいな話をした記憶があります。
その頃、僕は小説をひそかに書くようになっており、そうか小説に書いてドラマ化されればいいんじゃん、なんてさらにアホみたいなことを考えたのですが、もちろん口にはしませんでした。

とはいえ小説のテーマにするのはアリだな、と考え、その後何度か挑戦しました。仕事では時に説教くさい主張になることが否めないので、そうではなくエンタテインメントとして楽しみつつ、ちょっとだけでも自然保護について知ってもらえるような作品です。
その試行錯誤をしている間に僕は一般企業に転職しましたが、だからといって自然や環境について考える気持ちが消えたわけではありませんでした。
その中で生まれたのが、冒頭にあげた乱歩賞応募作だったわけです。
設定としては気に入っていたものの、世に出ることなく終わってから九年。おかげさまで小説家としてデビューし、五作目も出せることになりました。それにあたり、ここらであらためて環境テーマをやれたらなということで(※3)、かつての応募作の設定だけを残してリブートした『環境省武装機動隊EDRA』が生まれた次第です。

エンタメであり、派手なドンパチもあるので、純粋に真面目に平和に自然保護に取り組んでいる人の一部には怒られてしまうかもしれませんが、それでも僕なりの思いを込めたつもりです。
二十代の頃、仲間たちと冗談交じりに話し合っていたことが、幾星霜を経てこんな形になりました。
まあ、月9ドラマ化はちょっと無理だろうけどね。

※1 第60回江戸川乱歩賞は、下村敦史さんが受賞された回です。この時、僕は乱歩賞に初めて応募し、二次通過したことでやや調子に乗ってしまいます。結局五年後に受賞できたのだから結果オーライですが。そのあたりのことはこちらに。

※2 財団法人日本野鳥の会というところで十数年間働いていました。

※3 これまでの作品にも、ちょこちょことそういうテイストは入れており、たとえば『クメールの瞳』の主人公はネイチャーフォトのカメラマンで自然保護団体に出入りしてたりします。


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