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夜
2024年10月8日 22:45
最近、時間を見つけてコンサートに足を運ぶようになった。そうしているうちに、一つの疑問が浮かんできた。その疑問が喉に刺さった魚の小骨のように、どうにも気になるようになってきた。レッスン時、思い切って先生に聞いてみようと思った。 ★「Hさんの無伴奏チェロコンサート、聴いてきました。」レッスンの準備をしながら、先生に報告した。「Hくんは2年前にドボコンでご一緒し
2024年9月30日 23:00
「こんばんは。今日も遅い時間のレッスンですみません。」私がレッスン室に入ると、先生は椅子から立ち上がった。「先週の演奏会、改めてお気遣い、ありがとう。」先生主催のアマオケ演奏会を聴きに行った際、私は先生へ花束と御祝儀を贈った。「無事に終わってよかったですね。ほっとしたでしょう?」「そうだね。」言った先生の表情が柔らかい。肩の荷が降りた感じ。「演奏会の贈り物、お菓子にしよう
2024年9月17日 22:55
5月、私の所属するアマオケの定期演奏会の際、チェロアンサンブルのロビーコンサートを行った。演奏を終えてロビーを去ろうとする私に、ご年配の男性が声をかけてきた。「チェロを弾くって、難しいものですか?」私は答えた。「そうですね…何年弾いても、モノになった感じが致しません。」「そういうものですか…。」ちょっとがっかりしたように男性がそう言ったのが気になった。突然の質問に正直に答え
2024年9月3日 23:11
汗疹とじんましんで身体中がかゆいこの頃。職場は冷房効いているけれど、動いていると暑い。体のあちこちがかゆくていつもモゾモゾしているから、同僚には変な踊りをしている人に見えているだろう…笑える。マスクで隠れた顔の下半分は、蒸れもあって大変なことに…。マスクを外せるときは外すようにする。皮膚科で薬を処方してもらった。風呂上がり、背中の薬はダンナに塗ってもらう。「じんましんの原因はさ
2024年7月29日 22:45
「お前のオケ、今度ピアソラの『ブエノスアイレスの冬』やるんだって?いいなぁ!大好きだよ。」レッスン前、先生が珍しく興奮気味に話してきた。「はい。カッコいいですよね。私も大好きです。」ピアソラ。昔、サントリーのCMでヨーヨー・マが「リベルタンゴ」をチェロで演奏していたのは有名だろう。以前、先生はアンサンブルコンサートでピアソラの「フーガと神秘」を演奏した。弦楽五重奏。曲の途中、足を
2024年7月16日 22:53
今年秋の発表会の曲を何にしよう?ここのところずっと考えていたけれど、今習っているバッハ無伴奏5番を超えるものを見つけられないでいた。チェロ師匠からの提案もいくつかあったが、どうもピンとこない。昔は先生指定の曲をやっていたが、どうしても好きになれない曲を弾いた際、4小節だけ弾いてステージを降りるということをやらかした(もちろんこっ酷く怒られた)。それ以来、先生は私に無理強いをしなくなった
2024年6月24日 22:34
「今日何時に帰ってくる?」仕事から家に帰り、すぐにレッスンの準備をして再度出掛けようとしたとき、ダンナに聞かれた。「んー、たぶん18時?センセの気まぐれで延長することがあるかも。」前回のレッスンは2時間半だった。ダンナ、何か悟ったような顔。「あー、あの人めんどくさいからなぁ。わかった。帰るとき、連絡ちょうだい。パラグライダーの大会でもらったビールでBBQしようよ。」センセ…
2024年6月4日 23:14
「センセ、私また、センセを怒らせるようなこと、しました?」そう言いながら、私はおずおずとレッスン室に入った。先生、キョトンとした。「なんで?」「だって…メールに返事がなかったから。」私は先日の所属オケ定期演奏会の翌日に先生へ『おかげさまで無事終わりました。』と長文メールを送っていた。「ああ…!」先生、思い出したように頷いた。「ゴメン!メールは読んでいたんだけど、返事するタイ
2024年5月16日 23:15
先生には先日会ったばかりだが、レッスンは1か月ぶりだ。私が楽器を準備して椅子に座るなり、先生が話し始めた。内容は、レッスンと関係ないことばかり。仕事のこと、親戚のこと、最近のニュースのこと。先生のお喋りが途切れたタイミングで、私は言った。「今の時間、センセにとっては休憩時間になってるんでしょう?」先生は一人で30分も喋っていた。私の前には4人、後ろには1人、レッスンが入って
2024年3月25日 22:54
「夜、久しぶりだなぁ。3週間ぶりか。」レッスン室に入ると、開口一番先生にそう言われた。3週間ってそんなに久しぶりでもないと思うのだが、なんだかんだで先生とは毎週顔を合わせていたからな。「確定申告は終わりましたか?」私が聞くと、「15日には終わったよ。年明けから少しずつ書類揃えるようにしていたからね。」先生、得意げにVサインしてみせる…かわいい。先生の家、物が多いからなぁ。「えら
2024年3月3日 23:14
扉が半開きになったレッスン室から“バッハ無伴奏チェロ組曲3番サラバンド”が聴こえる。この華やかで軽やかな演奏は先生のものだ。すぐにわかる。「なつかし〜。」そう言いながら、私はレッスン室に入った。私が2年前の発表会で弾いた曲。(私のサラバンドは重っ苦しい。低音を効かせたがるからだ。)先生は私に気付かないようで、演奏を続ける。いつものことだ。きっと、どこかの演奏会で弾く予定があるの
2024年2月19日 23:53
自宅練習で時間があれば、オケで演奏するブラームス交響曲第3番のいずれかの楽章を、音源と合わせて通して弾くことにしている。1楽章の最後の部分、弦楽器の嵐が去って、天から光が差し込むようなチェロのソロを弾く時なんか、チェロやってて良かった、オケやってて良かった、生きてて良かった!とさえ思えて泣けてくる。 ★前の生徒さんと入れ替わりにレッスン室へ入った。「先日はお邪魔
2024年1月22日 22:36
先週に引き続き、今週もレッスン。今回は、私が一番最後だ。「今日はセンセのお父さんの月命日じゃないですか。こんな遅い時間までレッスンしていていいんですか?」楽器をケースから取り出しながら私が聞くと、先生がびっくりした表情をした。「どうしました?」「よく覚えているね。」「…そりゃあ、そうですよ。」先生の返事に私は訝しみながらそう言った。先生はちょっと困ったように私の疑問に答
2023年11月28日 23:02
「センセ、外は雪が舞ってますよ。」言いながら、私はレッスン室に飛び込んだ。室内は暖かい。「うん。急に寒くなったもんなぁ。」と、先生。「風邪に気をつけてくださいね。」と私が言うと、先生「僕は今のところ健康なんだけれどね、」と言って、浮かない表情をする。「何かあったんですか?」「仕事仲間のヴァイオリニストがね。脈が遅いということで病院へ行ったら、あっという間に心臓に付ける電子機器