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小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第16回「インサイト」
B総研のチームはA社から依頼を受けた案件のアンケート設計で失敗し、汚名挽回のための方策を練っていたがなかなかいい案が出てこなかった。
フリーコンサルタントの立場でB総研チームに参加している八木誠人は自宅で一人夕食を摂っているときに昔先輩の今だから言われた一言を思い出し、買っておいたマーケティング関係の本を引っ張り出してきた。
「あった。これだ」
つい3週間ほど前に読んだ本に「消費者のインサイ
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第15回「汚名挽回」
八木誠人を含むB総研のメンバーは自分たちが設計した社内アンケートで思うような結果と成果が出せなかった。
それどころかクライアントであるA社の若手社員にやんわりとだがアンケート設計の間違いを指摘されてしまった。
B総研の三瀬、佃、それにフリーコンサルタントとして参加している誠人は汚名挽回のための会議をリモートで開いていた。
誠人は自宅から参加していたが、三瀬と佃は同じ会議室にいた。
こういう
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第14回:間違っていた「本当の顧客」
A社の社内アンケートの結果は八木誠人を含むB総研メンバーの想像通りではなかった。
経理部で『クラウド清算野郎』に満足している人は24人中なんと全員。
経理部全員が『クラウド清算野郎』の導入によって作業的な負荷が軽減されたと答えたのだ。
誠人はB総研の三瀬と佃と会議をしていた。
アンケートの結果を前にして3人とも無言の状態が続いたが、まずは佃が重い口を開いた。
「うーん、意外な結果でしたね
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第13回:一人でお祝い
フリーコンサルタントとしての業務初日を終えた八木誠人。
なかなかいい感じに進んだので、ちょっとしたお祝いを一人でしようと駅前の餃子の王将に出かけた。
残念ながら、王将ではコロナの影響で酒類の提供が自粛されていた。
餃子と一緒にビールを飲みたかった誠人はどうしたものかと迷っていたが、思わぬ人から声を掛けられた。
「あ、あれ、佐竹さん、、、でしたよね?」
「はい、佐竹です」
王将の前で真剣
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第12回:本当の顧客
A社の新商品『クラウド清算野郎』の売上アップ戦略を構築するため、A社から依頼を受けたコンサルティング会社B総研。
B総研の担当は三瀬と佃。
八木誠人はB総研のチームの一員として、A社のプロジェクトに関わりはじめていた。
昨日のA社とのキックオフミーティングで早くも課題が分かってきた誠人を含むB総研のプロジェクトチームは、実際に自社製品『クラウド清算野郎』を導入しているA社経理部へのヒアリング
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第11回:キックオフミーティング
キックオフミーティングは高橋が仕切る形で進んでいった。
誠人の自己紹介に続いて、他の面々が簡単に自己紹介してくれた。
7人のうち2人は誠人の直接のクライアントであるB総研の人間だが、この二人は以前からA社で業務をしているらしく、メンバーとも顔なじみのようだった。
A社の5人は40代後半であろう高橋を筆頭に20~40代と思しき顔ぶれだった。
一番若そうな佐竹という女性はおそらく20代半ば。
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第10回:業務開始
面談の翌日の昼過ぎ。
みらいワークスからメールがあった。
『昨日は面談ありがとうございました。
先方より、ぜひ八木様に支援いただきたいとのことで、正式に受注してよろしいでしょうか?
・報酬は90万円/月 稼働率は40% 月額36万円
・稼働日は週2日(具体的な稼働曜日等は今後相談)
・契約期間は来月1日からの3か月
・勤務は基本リモート(場合によって出社の可能性あり)
何卒、前向き
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第9回:ノウハウ
「10年間に及ぶ営業経験を御社でも活かせると思います」
誠人は今回の依頼元であるコンサルティングファームの担当者とオンライン面談をしていた。
「そうですね。期待しています。でも、うちで活かしてもらうというより、実際のエンドクライアントであるA社で活かしてもらうことになるんですけどね」
「あ、はい。すいません。理解しています」
今回の案件は、商流で言うと、
エンドクライアントであるクラウド
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第8回:会社の将来
週明けの月曜日。
誠人は今日はリモートではなく出社することにした。
誠人の会社ではすべての会議をリモート対応にしているので、どうしても出社しなければいけないということはないのだが、たまにはオフィスの空気も吸っておかないとという気持ちがあった。
リモートワークは気楽な反面、どうしても孤独感にさいなまれてしまう。
通勤は面倒だが、やはりオフィスは自分の居場所という感じがする。
オフィスに着く
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第7回:マーケティング
こうやって”勉強”するのはいつ以来だろう。
誠人は自分の行動に驚いていた。
自腹を切って自らマーケティング入門の本を買って、朝からずっと読んでいた。
入門レベルだけあって、昼飯を食う頃には2冊とも読み終えていた。
昼飯は買い置きしているインスタント袋麺で済ますことにする。
冷蔵庫を見るとベーコンがあったのでこれをフライパンで炙る。
麺を煮はじめて2分後に卵を入れて、更に一分間煮込む。
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第6回:案件応募
みらいワークスの担当者と面談して二日後の金曜日の夕方。
今日もテレワークでずっと自宅にいた。
今週の仕事も終わりかけて、誠人はほっとしていた。
この二日間はみらいワークスからの連絡は特になかった。
今週は本業が忙しかったこともあり、誠人もフリーコンサルタントに関してあまり考えることはなかった。
ふと誠人は自分のiPhoneでメールチェックをしてみた。
自分用にGmailのアカウントを取
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第5回:エージェント
今日は土曜日。
誠人は珍しく休日にパソコンと向かい合っていた。
出歩くのが好きな誠人だが、コロナの影響で最近は休日でも部屋に引きこもっていることが多かった。
大体テレビを見たり、Netflixで映画やドラマを見たり、あるいはiPadでネットサーフィンをしながら時間をつぶすことが最近の休日ルーティンだった。
パソコンと向き合っていたのはもちろん自分の棚卸しをして、職務経歴書を作り上げるためだ
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第4回:副業OK
誠人はちょっと冷静になっていた。
ここまで1時間半ほど今田から話を聞いて、フリーコンサルタントになることはとても魅力に思えた。
ただその反面、会社を辞めるということもイメージできなかった。
さっきは自分から「成功できるんですかね?」と聞いてしまったが、これ以上今田の話を聞くとずるずると巻き込まれるのではないかと少し心配になった。
こういう時は、早めに自分の意思を伝えたほうがいいだろう。
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第3回:事業会社
今田の話を聞きながら、誠人は自分のこれまでの10年間のサラリーマン生活を振り返っていた。
ここ最近「このままでいいのか?」という疑問を抱いてきたが、今田の話を聞いているとこの10年間は無駄ではなかったような気がしてきた。
今田は、これまでの会社生活で得た経験や知識を活かして、フリーコンサルタントとして成功しているようだ。
「今田さん、ファームってなんですか?」
「ファームはコンサルティング
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第2回:棚卸し
誠人は今田の話にはまだ半信半疑だった。
フリーランスになってそんな簡単に年収を倍にできるなんて話があるのだろうか?
しかも長引くコロナで旅行業界以外も大打撃を被っているはずなのに。
よしんば今田の年収が本当に会社員時代の倍になっていたとしても、それは自分には関係のないことに思えた。
「今田さん、僕はコンサルタントの経験なんかありません。新卒からずっと旅行営業一筋でやってきたので、僕にはフリ
小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第1回:フリーコンサルタント?
「では、あとはいつも通りに3社に見積もりを取って進めてください。今日はお疲れさまでした」
誠人はオンライン会議から退出した。
時間は午後7時40分。在宅でこの時間なので、出勤していたらマンションに着くのは9時を過ぎていただろう。
コロナで出勤は週1日まで抑えられているが、仕事はなんとかこなしている。
むしろ最近ではオンライン/リモートでの仕事にもすっかり慣れて、通勤がない仕事の仕方が少し快