小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第5回:エージェント
今日は土曜日。
誠人は珍しく休日にパソコンと向かい合っていた。
出歩くのが好きな誠人だが、コロナの影響で最近は休日でも部屋に引きこもっていることが多かった。
大体テレビを見たり、Netflixで映画やドラマを見たり、あるいはiPadでネットサーフィンをしながら時間をつぶすことが最近の休日ルーティンだった。
パソコンと向き合っていたのはもちろん自分の棚卸しをして、職務経歴書を作り上げるためだった。
今田はこの作業に1週間を費やしたと言っていた。
まずは写真を取らせてもらった今田のタグが書いたレポート用紙の文言をそっくりそのままwordに入力してみる。
・旅行業に関する深い知識と経験
・個人営業、法人営業のスキル
・プロジェクトマネージメントのスキル
・新規事業開発のスキル
・個人、法人向けのマーケティング戦略構築のスキル
5分ほど画面とにらみ合って誠人は思った。
「このままでいいや」
期間こそ誠人のほうが短いが同じ会社でずっと同じ部署だ。
そんなに経験値が変わるものでもないだろう。
そもそも副業ということもあり、今一つ真剣に考えられてなかったかもしれなかった。
その後はそのタグをもとに時系列的に自分の今の会社での実績などを記していった。
ここでも真剣に考え切れていなかった感は否めない。
なぜなら今田が1週間かかったという作業を誠人は2時間で終えてしまったからだ。
フリーコンサルタント・エージェントのサイトにアクセスして、コンサルタント登録をしてみる。
「最初のエージェントなら、フリーコンサルタントjp一択でいいんじゃないか?」
今田の明確な進言があったので、そこにも迷いはなかった。
「フリーコンサルタントjpは業界最大手で案件数も一番多い。しかも俺が接触したどのエージェントよりも親身になって、俺の話を聞いてくれたし、その後の成約率も抜群だった。まず、ここで間違いないと思うよ」
今田の実体験なので疑う余地はなかった。
メール登録するとすぐに自動返信が来て、職務経歴書をアップロードするように促された。
今日は土曜日なので返信は週明けになるかなと思いながら、誠人はパソコンを閉じた。
週が明けて水曜日、テレワークであることを利用して誠人はフリーコンサルタントjpを運営するみらいワークスの担当者とのオンライン面談を10分後に控えていた。
こういった面談は大学生時代の就活の時以来だったので少し緊張していた。
自分が1時間で書いた職務経歴書を何度か見直し、誤字や脱字も見つかってしまった。
そうこうしているうちに約束の時間になったので、Google Meetsの会議画面にアクセスする。
先方は二人。
二人とも想像していたよりも若かった。
今田に聞いていた通り、本当に親身になって話を聞いてくれた。
中途半端な気持ちで申し込んだ自分が申し訳なく思えるくらいだった。
雑談などもはさみながら時間程度話し込んだ。
「じゃあ、見合う案件があったらまたメールで連絡しますね」
最後まで笑顔で会話してくれた。
夕方6時。仕事が終わったタイミングで今田にLINEしてみた。
『今日、みらいワークスと面談しました』
『どうだった?』
『とてもいい感じで話を聞いてくれました。ファーム出身じゃなくても十分に案件はあるというのも今田さんの言ってた通りでした』
『ww疑ってたのかよ?じゃ、あとは楽しみにして待つんだな』
『はい』
誠人はここ最近ではあまりないくらいにワクワクした気持ちになっていた。
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