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小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第3回:事業会社

今田の話を聞きながら、誠人は自分のこれまでの10年間のサラリーマン生活を振り返っていた。

ここ最近「このままでいいのか?」という疑問を抱いてきたが、今田の話を聞いているとこの10年間は無駄ではなかったような気がしてきた。

今田は、これまでの会社生活で得た経験や知識を活かして、フリーコンサルタントとして成功しているようだ。

「今田さん、ファームってなんですか?」

「ファームはコンサルティングファーム、つまりコンサルティング会社のことだ。マッキンゼーとかアクセンチュアとか聞いたことくらいあるだろ?」

「ああ、コンサルティング会社のことですか。船井総研なんかもそうですかね?大学の同期が就職してます」

「うん、船井総研もそうだな」

「なるほど、で、先輩のタグがファームの連中と渡り合える武器になるというのはどういうことですか?マーケティングとか新規事業とかプロジェクトマネジメントとかってそれこそコンサルティング会社の人のほうが専門性が高そうですが。。。」

「そう、彼らは経営課題を解決するプロフェッショナル集団だから、それらに関する知識を会社として何年も蓄積しているし、高い専門性を持っている」

「そうですよね」

「ただ、俺達には彼らは持っていない毎日毎日何十年も蓄積してきた事業会社での経験という最強の武器がある」

「はぁ。でも失礼ながら、うちの会社には今田さんと同じかそれ以上の経験をしてきた営業マンは何千人もいますよね?ほかの旅行会社も含めると日本には何万人という旅行営業マンがいるのでは、、、、」

「その通り。旅行業界には俺と同等かそれ以上のスキルを持っている奴はごまんといる。ところが、コンサルティング業界に旅行を24年もやってきた人間がたくさんいると思うか?

「あ、」

「俺は自分の経験や知識を活かして、別の仕事をするのではなくて戦う戦場を変えることにしたんだ。24年も旅行業界にいたコンサルタントなんて日本でいても数十人だと思った。案の定、旅行やレジャーのコンサルティングが俺の案件の半分以上だ」

「なるほどー」

誠人は今まで自分が考えたこともなかった発想にため息をつくしかなかった。

しかし、同時にある疑問が沸いてきた。

「今田さん、でもそんな案件ってほとんどないんじゃないですか?」

「はは、その通り。数は少ないよ」

今田はテーブルに置いてあったiPadを手に取って何やら操作し始めた。

「これがフリーコンサルタントエージェントサイトの案件一覧だ。ちょっと見てみな」

誠人はこんなサイトがあることどころか“フリーコンサルタントエージェント”という言葉を聞くのも初めてだった。

iPadを受け取って見てみる。

・大手事業会社のSAP導入支援

・ベンチャー企業のECサイト構築

・小売り大手のDX支援

「IT関係が多いですね」

「そうだな。感覚的には少なく見ても半分以上はIT系だ。でもここに載っているのがすべてじゃない。エージェントが公開していない案件のほうが実は多い。それでも誠人が言ったように旅行やレジャーの案件なんて少ないよ。でも需要は少ないがさっきも言った通り、俺みたいに旅行に精通しているコンサルタントはほかに少ないから供給も極端に少ない。結果として、俺はこうやって希少な存在として高単価な案件を取り続けられるわけだ」

「うーん」

「逆に、IT系のエンジニアなんかはとても需要が多い反面、フリーランスのエンジニアはとても多いから供給も多い。なので案件の取り合いになりやすい」

「なるほど、案件が多ければいいわけじゃないんですね」

「その通り、あとはもちろんコンサルタント側にも重要なことがある。最初に言ったろ、コンサルタントにはなれる人となれない人、成功する人と失敗する人がいるって」

「・・・僕は、成功できるんですかね?」

今田はにやりと笑って、フライドチキンを口に放り込んだ。

「ちょっとはその気になってきたな。じゃあ、誠人がフリーコンサルタントとして成功できるかどうか、これから一つずつ確認していこう」

誠人はなぜかとても緊張してきた。



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