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小説「最強のフリーコンサルタントへの道」 第6回:案件応募

みらいワークスの担当者と面談して二日後の金曜日の夕方。

今日もテレワークでずっと自宅にいた。

今週の仕事も終わりかけて、誠人はほっとしていた。

この二日間はみらいワークスからの連絡は特になかった。

今週は本業が忙しかったこともあり、誠人もフリーコンサルタントに関してあまり考えることはなかった。

ふと誠人は自分のiPhoneでメールチェックをしてみた。

自分用にGmailのアカウントを取得しているが、会社のパソコンでは個人のメールはチェックできないし、個人アドレスにくるメールは広告の類ばかりで普段から1日に数回しかチェックしない。

ざっとメールのタイトルを見るが、それらしいメールは来ていなかった。

「まぁ、2日前に面談したばっかりだからな」

特に気にもしなかったが、その時丁度新着メールが届いた。

送信元は「みらいワークス」、タイトルは「新規案件のご紹介」。

誠人はドキドキしながらメールを開いた。

『新規案件のご紹介です。

下記の要綱を見て、ご興味があられるようでありましたら、ぜひとも先方に八木様をご紹介したいと思います』

iPhoneの画面上で人差し指を滑らせる。

20行程度に渡って案件の詳細が書かれているが、具体的なクライアント名などは伏せられていた。

一番気になっていた部分は最後のほうに書かれていた。

・報酬 100~120万円/月 ※100%稼働時

・稼働率 40~50%

一番少なく見積もって月に40万円。

誠人の手取り月収より上の金額だった。


業務内容としては、

・大手事業会社のマーケティング支援

・既存サービスの売上向上のための戦略の構築

などとある。

正直言ってあまり自信を持てそうな案件内容ではなかった。

反面、このメールに記されている内容だけでは具体的に何をすればいいのかもうひとつ分からなかった。

誠人は、会社から支給されているパソコンをしまい、返信を書くために自分のパソコンを開いた。

『案件のご紹介ありがとうございます。

とても興味があります。

一度詳細をお伺いできれば幸いです』

簡潔に詳細を聞きたい旨だけを記して、送信した。



週明けの火曜日。早速、みらいワークスの担当者とリモート面談することになった。

前回の担当者とは違い、このクライアントの営業担当だとのこと。この人も感じがいい人だった。

「単刀直入に言いますが、旅行業以外の経験がないもので具体的にどんなサービスか分からないと自分が本当にお役に立てるのか今一つイメージできないんです」

「企業を特定するサービス名はまだ言えないんですが、サブスクリプションのコンテンツを扱っているサービスになります」

「なるほど、旅行の経験はあまり活かせなさそうですね」

「それは、八木さん次第だと思いますよ。旅行もコンテンツもマーケティング視点で考えたときに売るものこそ違えど考え方やアプローチは共通する点が色々あるのではと思います。」

「確かに」

本当は自分のやってきたことがマーケティングと言えるのかにも少し疑問を感じていた。

今田はマーケティングだと言っていたが、あくまでも誠人の所属部署はずっと”営業部”だった。


「でも本当に自信がないんだったら無理に受ける必要は全くないと思います。いざ契約が成立してもいい結果が出なかったら、弊社もクライアントも八木さんもみんないいことないですからね」

「うーん。やってみたいんですけど、今の段階できちんと成果が出せるのか自信がないのも本当のところです」

「まず先方さんに八木さんのレジュメを提出して、先方も興味をお持ちになられたら面接をすることになりますので、そこでもっと具体的に色々伺えますよ」

しばし考えたが、まだこれで決定ではないのだから先方の話を聞くことにリスクはないと判断した。

「分かりました。では、レジュメの提出をお願いできますか?」

「はい、先方から返答があり次第また連絡させていただきますね」



誠人は期待と不安が入り混じった気持ちだったが、変な不安ではなかった。



二日後、みらいワークスの担当者からメールが来た。

『八木様のレジュメを提出させていただいたところ、残念ながら今回はお見送りとなってしまいました』

誠人は少しほっとしている自分に気づいていた。

そして5分後にはアマゾンのサイトを開き、レビュー評価の高いマーケティング入門の本を2冊注文していた。



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