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赤い金魚と僕の物語り

風が止み、夕焼けが空を染める頃、静かな町の一角に佇む古びた家。
早くに両親を亡くし、姉は嫁ぎ、広い家にただ一人。生きるために生きている。三十路を目前にし、僕は考えることを諦めていたそんな人生について向き合っていた。金魚鉢の前に座り、水槽の中で穏やかに泳ぐ「金魚」に話しかけて。それは、投影していたのかもしれない。金魚鉢で飼いならされる金魚と僕を。

姪っ子がお祭りで手に入れたその金魚は、飼い猫を理由に僕のもとへと託された。とても小柄で泳ぎ方が少しだけ変な真っ赤な金魚。定期的に水槽の水を替え、定刻に餌を与える。時にはビールを片手に、金魚を鑑賞がてら体調を伺う。

適切な温度、適切な環境、適切な餌の量
水に入れるだけではいけない飼うということ。

夕暮れの静けさの中で、去年まで会社のリーダーをしていた自分を顧みる
自分はふさわしかったのか、みんなに最適な環境を提供できていたのか。
遠ざけいていた過去が僕を縛り酸素をうまく取り入れられなくする

赤い金魚がぴちゃんと跳ねた
まるで私を見て、ここにいるよとアピールしているようで
不思議と落ち着きを取り戻せた
あれだけ小さかった赤い金魚がとても大きく見えた
いや、実際大きくなったんだね。適切な環境の中で。

金魚と僕。
飼いならされていく金魚は順応していく
ここが私の世界だと、幸せそうに
僕と金魚。
この生活に順応し金魚に飼いならされている
ここは君が世界だと、楽しそうに
そう教えてくれる


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