見出し画像

うつろい儚く散れますように

声が、声が。出そうとしているのに出てこない。どうしてこうなったのか全く覚えていないけれど、私はどうやら死んでしまったようだ。そして病む私。死んでも病んじゃうんだ、つらい。

目の前には夫が私の名前を呼びながら泣いている、ねぇ私ここにいるよ?
もう何十回何百回、いや何万回と叫んだけど私の声は届かなくてそれでも彼の時間は進み続けることに後悔している。
知らなければよかった、あなたがこんなに私を思っていただなんて。私が死んで20年。変わらず私を愛してくれている。なんでそこまで私にこだわるのか分からなくて病む。つらい。

ずーっとずーっとあなたを見てきて、見た目も声もすっかり変わっちゃって。そんなあなたを私は嫌いになれないよ。もうここまでくると私が私だという意識が薄れていくのよ。それが今は怖い。そして誰とも関わらないあなたはもっと怖い。

毎朝仏壇で私への挨拶を忘れないあなた。
ご飯を食べるときは必ず手を合わせる、トイレの便座はきちんと下げて、靴下は丸めて洗濯しない。寝るときには必ず好きなお香を焚いて、終わりの香りを楽しむ。必然的に自然と私を意識してくれて。

この20年ずっと考えてきた、何が理由で後々後悔するんだろうなって。それは言わずに終わった人生についてだと思う。いずれまた言う時がくるって思っていたから。今日じゃなくてもいいやって、どうでもいい事、その言葉を思い出せずに私を悩ませる。

早くあなたを解放させてあげたいのに「さよなら」という言葉が私の回りを漂っている。それは呪縛のようにあなたを縛り付け私を留めさせ、もう潰れてしまいそうじゃない。「いつか君も、遠くへ行ってしまうの?そうだとしたら僕は今だけを考えるよ。」一瞬私を見ているような気がしたけど、その視線はとても穏やかに私の写真を見つめていた。
あぁ、あなたをこれほど愛おしいと思ったことはないわ。私は少しご機嫌で大好きだったミュージカルのように踊って見せた。またあなたは穏やかな顔を見せた。私はいつの間にか病むことが減った。

最近のあなたは少し元気がないわね、それは私の意識が薄らぐのと関係あったりするかしら。そして独り言が増えた、まるでそこに「私」がいるかのように独り言が増えた。
「覚えていてほしい、君をただ好きになったことを。そして僕の独りよがりで失くしてしまった特別なものを。」あなたの愛をもっと感じていることが出来れいれば、なんて思ってしまうじゃない。

今思うのは、あなたの延長線上に「私」が存在していることに幸せを感じているの。だってそう思わない?20年も居もしない私だけを見るなんて異常だわ。忘れたいと思う気持ちがこれっぽっちもないじゃない。できる事なら、その思いは夢の中に閉じ込めてほしかった。そうすればここにいる必要もなかったのに。愛だけが大きくなってもうあなたの前に現れることは出来ないというのに。

堅実なあなたは「今の連続」って言って今を生きていたけれど、私は少しだけ未来を見つめたかった。あぁそうか、これが伝えたかった言葉だったのか。いつも言いたかったけど、いつでもいえるって言葉を濁し続けた。未来の話をいつまでも思い続けていたから私は眠れなかったのかもしれない。あなたと共有したい願いはもう叶わないことは、わかっているのにそのせいで20年も居続けちゃった。だけどそろそろ私は逝かなくちゃいけない、それは今日かもしれないし明日かもしれないし。私にとってはもうどっちでもいいんだけどね。

これほど長くあなたを見ていても私がいつか逝くことは分かり切っているから。そのあとの自分の行方は分からないけど、天国ではなさそうだ。あなたを置いていった罰かな。
ずっとそばに居られて、あなたの気持ちに触れて私は幸せでした。私はあなたと出会った瞬間のあなたの笑顔だけは覚えています。

あぁ時間なんだね、もう私は消えるのね。
どうかあなたが私を思っていてくれるのなら、見てくれだけでも天使でありますように。人の心のように、うつろい儚く散れますように。
知ってしまえば戻れない地獄の味を・・・

あとがき
この詩は、深い哀愁と愛情が溢れています。心の病に苦しんだ主人公と、愛情をうまく表現できなかった夫という二人の物語りです。愛する人への未練と彼を解放したいと願いの間で揺れる心情。

彼女は心の病から命を絶ってしまいます。死しても尚病んでます。
キーワードは、彼女が彼にずっと言えなかったどうでもいい言葉を思い出せなくて20年もの間、夫を見守ります。その間、言葉足らずだった夫が変わらず愛情を持ち続けていることを知ります。また、夫が彼女の教えや独り言で思い出す姿が、彼の心の中に彼女が生き続けていることを示しています。

そして、彼女は夫への愛情を天国には逝けないけれどで胸に留めたいと願います。見た目だけは天使でありたい、その儚さとともに散りたいという願いが、物語にさらなる深みだと思ってます。

愛と喪失、悔恨と受容の感情が交錯し、彼女の決断と夫への思いを紡ぎました。

夫の愛情の深さを感じた彼女は「今の連続」という口癖の夫の言葉が好きではなくて、本当は今ではなくちょっとだけ未来の話をしたかったのが心残りでした。その言葉を思い出したから彼女の思いは昇華され彼女自身も次へ進むことができたのかもしれませんね^^

「覚えていてほしい、君をただ好きになったことを」この言葉が結構好きですww

もし、夫が彼女のことを最初から見えていたとしたら・・・・・・・・
その世界線で読むと、夫婦生活は彼の中でずっと続いていたのかもしれませんね(〃▽〃)ポッ

言葉の羅列から生まれるストーリー

無造作に無作為に言葉を羅列する
そのままの順番でストーリーを作る
今日はこの羅列↓↓↓

声が、声が,覚えていないけれど,そして病む,知らなければよかった,わからなくて病む,嫌いになれない,薄れていく,終わりの香り,必然的に,何が理由で,後々後悔するんだろうな,言わずに終わった,いずれ,悩ませる,さよならという言葉が,潰れてしまいそう,いつか君も,今だけ考える,覚えていてほしい,ただ、好きになった,特別なものを,延長線上に,そう思わない?,忘れたいと思う気持ち,夢の中に閉じ込めて,今の連続,濁る,いつまでも思い続ける,眠れなくなる,共有したい,叶わないのに,それが明日かもしれないし。,どっちでもいい,分かり切っている,行方がわからない,笑顔だけは覚えてる,消えるの,ありますように。,人の心のように,知ってしまえば戻れない


この記事が参加している募集

スキしてみて

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

儚く美しい詩や物語が好きです★また明日も頑張ろって思えるようなものご用意しています♡ぜひご覧ください。いっしょに素敵な世界線へまいりましょう。