詩 『No Home』
作:悠冴紀
私は人の子にあらず
とうに自ら放棄した
後悔はない
今は常に満たされている
家族はいない
二度といらない
母とは大地
父とは大気
私にはそれで充分だ
帰るべき生家はない
なくていい
すべてを宿しながら
何者をも囲わない 無限の宇宙
里と呼ぶに相応しい 唯一の場
皆はじめから
そこにいたのだ
影は智
光は力
思えばずっと
そう生きてきた
子にはならぬが
親にもならず
ただ学び
ただ諭して
── 私に雨をくれ
濁った雨を
私に風をくれ
斬るような疾風を
それがむしろ
歓びになる
雲よ
屋根の真似をしなくていい
木立よ
私を護らなくていい
ここにはむしろ
地の利がある
責任ある自由と
後ろ盾なき独走
求めたすべてが集約されて
こうした今をもたらした
これが唯一の
帰るべき家
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※2012年5月の作品。
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