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エッセイ

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ただのエッセイです。好きなことを好きなように。思ったことを思ったように残しています。
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#あたらしい自分へ

29歳、団地で一人暮らしをするという選択

29歳、団地で一人暮らしをするという選択

2019年11月、ぼくは28年間暮らした大阪北摂にある実家を出た。一人暮らしをした経験がないということに加えて、28歳にもなってずっと実家暮らしという事実に、若干のコンプレックスを抱くようになっていた。20歳の頃から2019年12月まで大阪モノレール線と大阪北急行線(御堂筋線)を乗り継いで、片道およそ1時間の道のりを通勤していた。

電車に乗ること自体は、それほど苦に感じたことはない。むしろ電車に

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感謝の代わりに言葉を

感謝の代わりに言葉を

人の関心は、基本的に自分自身に向いているのではないかと思う。だから芸能人など人の関心を集められる人は、本当にすごいのだろう。その人の生き方や価値観がたとえ自分と違っても、すんなり受け入れられちゃうのは、何よりもすごく、そして怖い。

ぼくは、どれだけ好きな人の言葉でも、それが正しいかどうかの判断は、自分自身でしたいと思っている。「誰々が言うから間違いない」というのは、思考を放棄してしまっているよう

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言葉にならない瞬間にちゃんと言葉を充てられる人になりたい。

言葉にならない瞬間にちゃんと言葉を充てられる人になりたい。

感情のボーダーラインがあるとすれば、その線をやや下回ったところを停滞気味に泳いでいるのがぼくだ。喜びとか楽しみとかそういうポジティブな感情を表現するのが苦手。あと感動系の映画とかドラマを観ていても、涙することはほとんどない。そして怒りを人にぶつけることも苦手だ。この時点で喜怒哀楽のうち、喜と怒と哀と楽は欠如している。全部だ。感情欠落人間。

そう思っていたけれど、ちゃんと嬉しいとか楽しいと感じるこ

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ワイプで抜かれたときにちゃんとリアクションできる人になりたい。

ワイプで抜かれたときにちゃんとリアクションできる人になりたい。

夜、ボーッとバラエティ番組を観ていた。芸能人がワイプで抜かれて「すーごっ!!」と言っていた。きっと自分自身がワイプで抜かれていることに気づいて、「ちゃんとリアクションしなきゃ」と思ったのだろう。あれは、間違いなくそれ用のリアクションだった気がする。

もしぼくが芸能人でテレビ番組の収録をしていて、ワイプで抜かれたとき、同じようにちゃんとリアクションできるだろうか。内心では、「わざとらしいリアクショ

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トンカツ弁当のトンカツの下に敷かれたスパゲッティみたいな人になりたい。

トンカツ弁当のトンカツの下に敷かれたスパゲッティみたいな人になりたい。

スーパーで割引の値札が貼られたトンカツ弁当を買った。電子レンジで温め直している間に、作り置きしていた緑茶をグラスに注いだ。何も食材の入っていない冷蔵庫は、ただ時折ゴウンゴウンと音を立てては、自分の存在価値をアピールしてくる。

「ピッピッピッ」と等間隔に音が鳴る。トンカツ弁当が温まったことを電子レンジが知らせた。「熱っ」という独り言を小さく言いながら、できるだけ触れないように、爪を立てるようにして

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