マガジンのカバー画像

ブックレビュー

6
運営しているクリエイター

記事一覧

【洋書】The Katharina Code/カタリーナコード〜北欧の雰囲気漂う極上のHuman-drivenミステリー〜

【洋書】The Katharina Code/カタリーナコード〜北欧の雰囲気漂う極上のHuman-drivenミステリー〜

邦題: カタリーナコード
著者: ヨルン・リーエル・ホルスト

《あらすじ》
舞台はノルウェー。Wisting警部は24年前に失踪したKatharinaの事件を解決できないままだった。Wistingは毎年、事件が起きた日に捜査ファイルを引っ張り出して読み返すのと、夫のMartinを訪ねることを習慣としていた。しかし24回目となる訪問のこの日、Martinは不在だった。そのとき、オスロの未解決事件班

もっとみる
【洋書】Interpreter of Maladies/停電の夜に〜切り上げ方に思わず唸った美しい作品〜

【洋書】Interpreter of Maladies/停電の夜に〜切り上げ方に思わず唸った美しい作品〜

邦題: 停電の夜に
著者: ジュンパ・ラヒリ

ジュンパ・ラヒリのデビュー作でピューリッツァー賞受賞作品。9つのストーリーが収められた短編集。

ラヒリの文章は毎回惚れ惚れします。まるで川の流れのように心地よくて、終わってしまうのがもったいくらい。しばらく余韻に浸りたい気持ちになります。

心に沁みる表現で溢れていて、この作品ではとくにキャラクターの心情描写が秀逸です。人間の繊細な気持ちが、静かに

もっとみる
【洋書】When Breath Becomes Air/いま、希望を語ろう〜意義のある生き方、意義ある時間〜

【洋書】When Breath Becomes Air/いま、希望を語ろう〜意義のある生き方、意義ある時間〜

邦題: いま、希望を語ろう
著者: ポール・カラニシ

末期癌に侵されながら懸命に生きた1人の医師の強さが、闘い抜いた姿が、心に焼き付きました。

最期まで彼を側で支え続けた妻のLucy。癌宣告を受けた後、それでも子どもを望み、生まれた娘のCady。

私だったらどうしただろう。

何を望んだだろう…

Paulが娘に残した言葉と、Lucyが書いたエピローグがたまません。

如何に自分らしく、意義

もっとみる
【洋書】Klara and The Sun by Kazuo Ishiguro/クララとお日さま〜未踏の部屋(人の心)は絶対残る?〜

【洋書】Klara and The Sun by Kazuo Ishiguro/クララとお日さま〜未踏の部屋(人の心)は絶対残る?〜

邦題: クララとお日さま
著者: カズオ・イシグロ

《あらすじ》
主人公クララは、人工知能を搭載したAIで、子どもの親友になる為に作られたロボット(Artificial Friend, AF)。お店のショーケースに並べられ、いつか誰かが買ってくれるのを待っていた。そこでジョジーという名前の少女と運命的な出会いをして、一緒に暮らすことになる。やがてジョジーの家族の大きな秘密を知り、クララはある決断

もっとみる
【洋書】La Tresse / 三つ編み〜逞しい3人の女性の姿が眩しい〜

【洋書】La Tresse / 三つ編み〜逞しい3人の女性の姿が眩しい〜

原題: La Tresse
邦題: 三つ編み

《あらすじ》
3つの国で、異なる境遇に置かれた3人の女性。それぞれ理不尽で困難な状況に勇敢に立ち向かう。

インド人のスミタは、娘に自分と同じ仕事をさせたくない一心で、彼女をなんとか学校に通わせようと力を尽くす。イタリアでは家族経営の会社で働くジュリアが、父の事故を機に、自分が倒産寸前の親の会社をなんとかしようと奮闘。そしてシングルマザーのカナダ人弁

もっとみる
『べつの言葉で』 ジュンパ・ラヒリ著 中島浩郎訳

『べつの言葉で』 ジュンパ・ラヒリ著 中島浩郎訳

2021年に読んだ本の中で一番のお気に入り作品。そしておそらく今後ずっと大事に本棚に置いて、何度も読み返すことになる作品であること間違いありません。

家族とともにアメリカを離れローマに移住したラヒリが、言語学習に焦点を当てて、その途方もない学びの過程を、惚れ惚れする文章で綴った名作です。

「小さな湖を泳いで渡りたい。ほんとうに小さい湖なのだが、それでも向こう岸は遠すぎて、自分の力を超えているよ

もっとみる