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日刊うたうたい。

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短歌らしきものを綴ってまとめていきます。 毎日七首、誰かの一週間を支えるうたになりますように。
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#現代短歌

木曜日の歌 7週目

木曜日の歌 7週目

夜ライブ気合いで定時に帰るぞと
カバンにペンラ入れて出勤

残業中 推しブロマイドが聞いてくる
仕事と僕とどっちが大事?

寝なきゃとは思っているよ、思っては
23時からリアタイするけど

新しい服も新色コスメまで
推しの色です 推しの衣装です

何食わぬ顔で通勤ラッシュタイム
押しつぶされつつ推しの曲聴く

飯を食え 暖かくしてよく眠れ
舞台もライブも最高だったよ

恋人というよりむしろオカン目

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土曜日の歌 6週目

土曜日の歌 6週目

あの日あの場所であなたにあった時
駆け出したくて仕方なかった

除光液 歪なネイル 派手なラメ
落として普通の私に戻る

胸いっぱい 冬の空気を 吸いきれず
噎せる大人と 走り出すきみ

満月を 一緒にみたい人がいる
綺麗と言いたい人がいる

たそがれの電柱裏にひとりきり
かつての怪異の頭領がいる

あの人へ渡す言葉を食べている
電子の海に漂うクラゲ

踊ってるシャワーと泣き出す洗濯機
歌う湯沸か

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金曜日の歌 6週目

金曜日の歌 6週目

数分の電車の遅延のせいにして
一日早い休日迎える

歩いても快速乗っても追いつけない
等間隔のレールの向こう

構内の放送告げるさよならを
朝日に照らされ戻らない君

爆音の音楽の裏で鳴り響く
誰かの命が今日消えた音

背を向けて走り出す先終点へ
乗り継いだあとにまだ道はある

ランドセル背負い並ぶ雀らと
マフラーに顔 うずめて寝る僕

こねずみをはるか空から狙う鷹
背景の富士に茄子は添えるだけ

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木曜日の歌 6週目

木曜日の歌 6週目

土踏まず 寄った靴下踏んづけて
なんでもない顔をして歩く

最安値 三百円で買える爪
剥げた塗装をそっと撫でる手

オーブンを開けようとした僕止める
指から香る バターと果実

流星を 繋げ束ねて 糸にする
紡いで君に届けるリボン

横たわる体の下に埋まってる
数多 星の数のつはもの

渋ってた君を誘って動物園
うさぎに埋まる君見て笑う

バイト代 たった7cmの背伸び
あなたの視界に入ってみたい

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水曜日の歌 6週目

水曜日の歌 6週目

湖を作れる悲しい気持ちだけ
溢れるわずか15㎖

あたたかく しかくいへやを飛び出して
眠気と寝癖をはらう鋭い冬

憧れの君が隣にいるなんて
これ明晰夢 うん、明晰夢

国破れ山河と共に私あり
途方に暮れる裸足で歩く

スピカより 何光年先 どこにある
貴方の星へ 夢見て翔ぶ

一月の朝 短パンに半袖の君と
まんまる厚着の私

渋谷地下 ハコのスタンドから宙へ
お前ら連れてく推進力

2020/

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火曜日の歌 5週目

火曜日の歌 5週目

いたいけな少女のようにあどけなく
笑って僕に傷つける君

じゃがいもを入れない主義の食卓と
牛より豚派のカレーが出会った

わりばしを9対1でまっぷたつ
呆れ顔するあなたが笑う

るり色のハワイの海を眺めてる
8K コタツで見るユートピア

ななくさを省きまくって台所
キャベツの入った粥がゆれる

かえりみち 商店街で受信する
「パン買ってきて」で終わる正月

よう、と声掛けられるまで気づかずに

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月曜日の歌 5週目

月曜日の歌 5週目

100グラム前後の紙の束魅せる
手のひらの上 無限の世界

お財布と変えの下着と携帯と
いつもの文庫をカバンに入れて

「今買うの?すぐに文庫も買うくせに」
「ハードカバーは、別物カウント」

大切な1冊胸に生きていく
この身一つで生きてはいけない

特別な儀式 寝る前 頭を悩ませる
今日の最後に読む本はなに?

美しく生きる理由にはならねども
死ねない理由の未完の大作

ことのは 紡ぐ人と 紐解

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日曜日の歌 5週目

日曜日の歌 5週目

カスタードの天鵞絨の上に敷き詰めて
食べる宝石 ショーケース並ぶ

全世界に今知れ渡る 焼き菓子は
遠い異国の誰かの思い

アルコール 苦さ 香りも わからずに
これが大人の味かと思う

赤緑 箱から取りだし日にかざす
ステンドグラスを覗く瞳

憧れと嬉しさ併せ蝋燭に
照らされる イチゴ 目に焼き付いて

故郷の初雪景色によく似てる
黒い大地に粉砂糖 降る

幸せを小箱に詰めて持ち帰る
甘さの前に

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土曜日の歌 5週目

土曜日の歌 5週目

一番に見られ 見る場所 指先の
伸びた爪を 美しく塗る

ごく普通 地味め平日ローテーション
土日に纏う 本当の自分

ケアも無駄 死んだ細胞と言うけれど
なら何故みんな執着してるの?

食べたもの見たもので人は変わるらしい
貴方で私はどれほど変わるか

握りしめ 震える拳 殴るじゃなく
自分のリンパを流すために

鍛えるは 向かい風に倒れずに
追い風に乗り 走り出すため

無理やりに昨日の空気

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金曜日の歌 5週目

金曜日の歌 5週目

箱根路を吹き抜ける風 吸い込んで
味方につけて 行く五十五里

病める日も健やかなる日もこの脚の
行けるとこまで行くだけですから

数秒間 枯れる気力を振り絞り
背を押し叫ぶ 頑張れの声

山の神 二十のなかの一人だけ
山の女神に愛された者

来る人と 諦めなかった待つ人を
別つ音と 乾いた襷

箱根山 神の道を駆け下りて
都で待つる 仲間の元へ

涙 汗 沁みる襷をそれぞれの
胸に道行く若人らよ

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木曜日の歌 5週目

木曜日の歌 5週目

箱根路の 凍った空気を駆け抜けて
今年も我が家に 正月が来た

近況を 年に一度 伝え合う
これから一年 また会わぬひと

よろしくと 声をかけ合う人の波
君の手のひら そっと握るよ

初詣 神様よりも君に会うために
早起き罰当たりな僕

松の葉の先に凍った朝露に
光る初日を 飲み込んだひと

お雑煮もおせちの中身も違うけど
二人でだったら楽しいかもね

一日の夜に疲れて寝る君の
初めての夢のさ

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年末年始の歌

年末年始の歌

「来年は毎日掃除するからな」
「去年も言ったよ 窓拭きながら」

待つ子らへポチ袋とピン札と
用意し始まる帰省支度

道中の混雑予想 手土産で
増える袋を計算に入れ

実の中のさらに小さなみかん見て
ぼくみたいだと笑う幼子

薄皮に栄養があるという母と
食いにくいだろとちまちま剥く父

武道館 実家に コミケ最終日
それぞれ過ごす この大晦日

走り去る月を追いかけ駆け抜けた
僕から僕へ襷をわた

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月曜日の歌 4週目

月曜日の歌 4週目

パッチンと切符の切られる音がなる
Suicaで行けない 駅に帰る

寝る食べる ビールを飲んで外を見る
それぞれの旅 電車内

後席から腕のアーチをくぐりぬけ
車窓をレールに 走るおもちゃ

都内から片道列車三時間
行けば行くほど 冬が濃くなる

並ぶ列 紙袋のなか おそろいの
菓子折り2つ きみも帰る人

福袋 予約を前に祈るよう
戦いは既に始まっている

道をゆく 人々の群れ それぞれの
ただ

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日曜日の歌 4週目

日曜日の歌 4週目

暖房の 届かない床 寝転んで
底に沈む 空気と眠る

はげかけた ネイルとともに恋心
コットンと一緒に捨ててやるから

届くもの 両手半径70センチ
腰までコタツに食べられる冬

宝石を目にはめ込んだ ゆきうさぎ
飛び跳ね 貴方に冬をお届け

2℃高い体温の傍 コート越し
こちらの熱を誤魔化す「寒いね」

あと一歩 昨日に追いつかれないよう
もう一歩だけ 我が爪先よ

絡みつく水の中を泳ぐよう

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