まいにち易経_0917【創業期の戦略と持続成長の秘訣】震きをもって鬼方を伐つ。三年にして大国に賞せれるることあり。[64䷿火水未済:九四]
九四。貞吉。悔亡。震用伐鬼方。三年有賞于大國。 象曰。貞吉悔亡。志行也。
震用:雷のような力強さで、何かを強く攻める様子
伐:討伐する
鬼方:昔の敵対する部族
大国:当時の大きな国=殷商
正しい道を進んでいけば、長い戦いの末に勝利し、大きな国から認められる。
正しいことを守れば、良い結果が訪れ、後悔はなくなる。雷のような勢いで鬼方という敵を討伐し、三年後に大きな国(殷商)から賞を受ける。
人生の教え
この爻の位置にある九四は、状況が少し改善し始めた段階にいることを表している。すでに危険な状況から脱し、これから勝利へ向かうタイミングにある。自分の立場が強くなり、正しい行動をすれば、最終的に後悔せず、良い結果が得られるということ。
この教えは「正しいことを貫けば、時間がかかっても成功する」というメッセージを伝えている。特に、困難を乗り越えるにはすぐに結果が出るわけではないが、努力を続けることで、最後には報われる。
関連する物語
この爻に関連するエピソードとして、古代中国の商王朝の時代にあった話が伝えられている。当時、商王武乙は天の神をバカにした結果、雷に打たれて死んでしまった。その後、周辺の諸侯たちが反乱を起こす中、周の王である文王の父、季歴が商王を助けて鬼方という敵を討伐するために戦いに参加した。彼は三年間戦い、最終的に勝利し、その功績で商王朝から大きな褒美を受けたという。
この爻からの教え
この話がこの爻に関連付けられているのは、九四の位置にある人に対して、困難な状況でも勇気を持って行動し、成功を目指すように励ますためだ。この爻から得られる教訓は次の通り。
・正しい道を進むことが、最終的に困難を克服するために重要。
・長期間の努力が必要だが、最終的には良い結果が得られる。
・物事は時間がかかることが多いが、忍耐強く続けることで、最後には成功する。
つまり、急がずにしっかりと努力を続ければ、最後には報われるという教えがこの爻に含まれている。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
「火水未済」という言葉、聞き慣れないかもしれませんね。簡単に言えば、これは「まだ完成していない状態」を表しています。つまり、何かを始めようとしている段階、いわゆる「創業期」のことを指しているのです。皆さんも、新しいプロジェクトを立ち上げたり、新しい部署に配属されたりした経験があるでしょう。そういった状況は、まさにこの「火水未済」の状態なのです。
さて、この「火水未済」の教えの核心は何だと思いますか?
それは「積極的に前に進め」ということです。ただし、ここで注意しなければならないのは、闇雲に突き進むのではなく、「力を着実に付けながら」進むということです。これは、ビジネスの世界でよく言われる「スケールアップ」や「持続可能な成長」という概念に通じるものがあります。急激な成長は時として危険を伴いますが、着実に力をつけながら前進することで、長期的な成功につながるのです。
勇気と積極性
さて、「火水未済」の教えには、もう一つ重要なポイントがあります。それは「勇気をもって」ということです。新しいことを始めるときには、必ず不安や恐れが付きまとうものです。しかし、その不安を乗り越えて前に進む勇気が必要なのです。
火水未済の九四は「震いて用て鬼方を伐つ。三年にして大国に賞せらるることあり。」と教えています。
これは、勇気を持って積極的に行動することで、最終的には大きな成功を収めることができるという意味です。ここで重要なのは、「奮い動く」という部分です。創業期や新しいプロジェクトの開始時には、多くの困難や障害が待ち受けています。それでも、皆さんにはその壁を乗り越え、前進する力があります。勇気を持って一歩踏み出すことが、成功への道を開くのです。
ここで注目したいのは「三年」という期間です。新しいことを始めて成果が出るまでには、ある程度の時間がかかるものです。この「三年」という具体的な数字は、私たちに忍耐の重要性を教えてくれているのではないでしょうか。ビジネスの世界では、「三年で黒字化」というのはよく聞く目標ですね。これは偶然の一致ではないかもしれません。古代中国の知恵が、現代のビジネス常識と共鳴しているのです。
さて、「火水未済」の対となる卦として「水火既済」があります。これは「既に完成した状態」を表し、いわゆる「守成の時」を指します。興味深いのは、この「水火既済」の時期には戦を起こすべきではないと教えていることです。
これは、企業経営においても非常に重要な教訓です。成功を収めた後は、その成功に甘んじることなく、しかし同時に無謀な拡大も避けるという難しいバランスが求められるのです。
私の経験から言えば、多くの企業がこの「守成の時」に躓きます。成功体験にとらわれて、市場の変化に適応できなくなってしまうのです。ここでも「火水未済」の精神、つまり常に新しいことにチャレンジする姿勢が重要になってくるのです。
ここで、日本の経営史上の興味深い事例を紹介させていただきます。松下幸之助氏が創業した松下電器産業(現パナソニック)は、戦後の高度経済成長期に大きく成長しました。しかし、1970年代に入ると成長が鈍化し、いわゆる「守成の時」を迎えます。
この時、松下幸之助氏は「水道哲学」を提唱しました。これは、企業は水道のように、良い商品を安価で豊富に供給すべきだという考え方です。この哲学は、「守成の時」にあっても常に顧客のニーズを第一に考え、革新を続ける必要性を説いたものと言えるでしょう。これは、まさに「火水未済」の精神を「水火既済」の時期にも活かした例と言えるのではないでしょうか。
まとめ
さて、ここまで「火水未済」の教えについて見てきましたが、これらの古代の知恵は現代のビジネスにどのように適用できるのでしょうか。
まず、新しいプロジェクトや事業を始める際には、「火水未済」の精神を心に留めておくことが重要です。つまり、勇気を持って前に進みつつも、着実に力をつけていくことです。具体的には以下のようなアプローチが考えられます。
小さく始めて徐々に拡大する:最初から大規模な展開を行うのではなく、小規模なパイロットプロジェクトから始めて、徐々に規模を拡大していく方法です。
失敗を恐れずに、しかし慎重に:新しいアイデアを試すことを恐れないでください。ただし、リスクを最小限に抑えるために、十分な準備と計画を行うことも忘れずに。
継続的な学習と改善:市場の反応を注意深く観察し、常に学び、改善を続けることが重要です。
長期的な視点を持つ:即座の成功を求めるのではなく、3年、5年といった長期的な視点で物事を見る習慧をつけましょう。
チームの力を活かす:一人の力には限界があります。信頼できるチームを作り、その力を最大限に活用することが、着実な成長につながります。
次に、成功を収めた後の「水火既済」の時期についても考えておく必要があります。成功に甘んじることなく、常に新しい挑戦を続けることが重要です。具体的には:
イノベーションの継続:成功した製品やサービスに安住せず、常に新しい価値を創造し続けることが重要です。
市場の変化への敏感さ:成功体験に固執せず、常に市場の変化に注意を払い、適応する柔軟性を保つことが必要です。
人材育成への投資:次世代のリーダーを育成し、組織の持続的な成長を確保することが重要です。
社会的責任の認識:成功した企業には、より大きな社会的責任が伴います。これを積極的に果たすことで、長期的な支持を得ることができます。
謙虚さの保持:成功しても謙虚さを失わないことが、さらなる成長につながります。
参考出典
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