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まいにち易経_0926【義と精:正しい筋道と研ぎ澄ます力の追求】義を精しくし、神に入るは、もって用を致すなり。[繋辞下伝:第五章]

精義入神。以致用也。

義をくわしうしてしんるは、以て用を致すなり。

物事の本質を深く掘り下げて探究し、その核心を理解しようと努めるのは、いずれそれを社会のために活かそうとする意図があるからだ。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

まず、「義」という言葉について考えてみましょう。これは「正しい筋道」を意味します。皆さんは日々、様々な選択を迫られることでしょう。その時、何が正しいのか、どう判断すべきか迷うことがあるかもしれません。しかし、「義」を意識することで、より良い判断ができるようになるのです。

例えば、ビジネスの世界で考えてみましょう。利益を追求することは大切ですが、それだけでは長続きしません。顧客や社会にとって本当に価値のあるものを提供し、従業員の幸せも考慮に入れる。そういった「正しい筋道」を歩むことで、持続可能な成功を収めることができるのです。

次に、「精」という言葉について掘り下げてみましょう。これは本来、玄米を白米に精米する過程を指します。皆さんの中には、実際に精米機を見たことがある方もいるかもしれませんね。玄米が徐々に磨かれていき、最後には美しい白米になる。その過程は、私たちの人生や仕事にも通じるものがあります。

物事を「生粋に研ぎ澄ます」というのは、まさにこの精米の過程のようなものです。例えば、新しいプロジェクトを始める時、最初はアイデアが荒削りかもしれません。しかし、チームで議論を重ね、試行錯誤を繰り返すことで、そのアイデアは徐々に洗練されていきます。最終的には、当初の想像をはるかに超える素晴らしいものになるかもしれません。

この「精」の概念は、個人の成長にも当てはまります。新入社員として入社した時、皆さんは多くの可能性を秘めた「玄米」のような存在でしょう。日々の経験や学びを通じて、自分自身を磨いていく。そうすることで、自分の強みや才能がより鮮明になっていくのです。

さて、ここで重要なのは、なぜ私たちはこのように「義」を追求し、「精」を極めようとするのか、ということです。易経は、その目的を「いずれそれを大きく用いて、社会の役に立つ力を養うため」だと説いています。

これは非常に深い洞察だと思います。私たち一人一人が持っている才能や能力は、決して自分だけのものではありません。それらは、社会全体をより良くするために与えられた贈り物なのです。

例えば、皆さんの中には優れた分析力を持つ人がいるかもしれません。その能力を磨き、正しく用いることで、企業の意思決定を助け、多くの人々の生活を豊かにすることができるでしょう。また、創造性に富んだ人もいるでしょう。その才能を活かして新しい製品やサービスを生み出せば、社会に大きなイノベーションをもたらすかもしれません。

ここで、歴史上の偉大な人物たちのことを思い出してみましょう。例えば、アルベルト・アインシュタインは物理学の分野で革命的な理論を打ち立てました。彼の「義」の追求と「精」の極めは、最終的に人類の宇宙観を変えるほどの大きな影響を与えたのです。

また、マザー・テレサの例も興味深いですね。彼女は「愛」という「義」を追求し、その実践を極めることで、世界中の貧しい人々に希望を与えました。彼女の行動は、私たちに思いやりの大切さを教えてくれています。

ビジネスの世界でも同じことが言えます。例えば、スティーブ・ジョブズは使いやすさという「義」を追求し、製品デザインを極めることで、テクノロジーの在り方を変革しました。彼のヴィジョンは、今でも多くの企業に影響を与え続けています。

このように、「義」を追求し「精」を極めることは、単に自己満足で終わるものではありません。それは、社会に大きな変革をもたらす可能性を秘めているのです。

また、「精」を極めるプロセスは、決して楽なものではありません。時には孤独を感じたり、自信を失ったりすることもあるかもしれません。しかし、そういった時こそ、自分の目指す方向性を思い出してください。そして、周りの人々とのつながりを大切にしてください。一人では気づかなかった視点を得られたり、思わぬ協力を得られたりするかもしれません。

最後に、皆さんに一つアドバイスをさせていただきたいと思います。それは、常に謙虚な姿勢を忘れないということです。「義」を追求し「精」を極めれば極めるほど、自分の知識や能力に自信が持てるようになるでしょう。しかし同時に、まだ知らないことがたくさんあると気づくはずです。

これは、古代ギリシャの哲学者ソクラテスの言葉を思い出させます。「私は、自分が何も知らないということを知っている」というのです。この逆説的な言葉は、知れば知るほど自分の無知に気づくという真理を表しています。

この謙虚さこそが、皆さんを真のリーダーへと導く鍵となるでしょう。なぜなら、謙虚さは学び続ける姿勢を生み、周りの人々の意見に耳を傾ける柔軟性を育むからです。

易経の教えは、数千年の時を超えて、今なお私たちに重要な示唆を与えてくれます。「義」を追求し「精」を極めること。そしてそれを社会のために用いること。このシンプル でありながら奥深い教えを、皆さんの人生の指針としていただければと思います。



参考出典

義の研究
「義」は正しい筋道。「精」は玄米を白米に精米すること。転じて物事を生粋に研ぎ澄ますことをいう。
人が正しい筋道とは何かと精細に研究を極め、神妙な真理を求めるのは、いずれそれを大きく用いて、社会の役に立つ力を養うためである。

易経一日一言/竹村亞希子

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