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まいにち易経_0904【陽の力で未来を創る:化成の哲学】重明をもって正に麗けば、すなわち天下を化成す。[30䷝離為火:彖伝]

彖曰。離麗也。日月麗乎天。百穀艸木麗乎土。重明以麗乎正。乃化成天下。柔麗乎中正。故亨。是以畜牝牛吉。

彖に曰く、離は麗なり。月日は天にき、百穀草木ひゃっこくそうもくは土に麗く。重明以ちょうめいもって正に麗く。乃ち天下を化成す。柔中正に麗く、故に亨る。ここを以て牝牛を畜うときは吉なり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

まず、「離」という字をご覧ください。この字は、火を表しています。そして、この卦では火が二つ重なっています。これは、何を意味しているのでしょうか?

想像してみてください。暗い夜道を歩いているとき、遠くに一つの明かりが見えたら、どう感じるでしょうか?おそらく、少し安心するでしょう。でも、もし二つの明かりが見えたら?さらに心強く感じるはずです。これが、「離為火」の基本的な考え方なのです。

では、この「二つの火」が教えてくれる大切なことは何でしょうか?それは、「明知」と「正しい道」です。

「明知」とは、物事をはっきりと理解する力のことです。例えば、チェスの名人は、何手も先を読むことができます。ビジネスの世界でも同じです。市場の動向や競合他社の動きを先読みできる人が、成功するチャンスが高いのです。

しかし、知識だけでは十分ではありません。その知識を「正しい道」に使うことが大切なのです。例えば、環境に配慮した製品開発や、従業員の幸福を考えた経営など、社会に貢献する方向で知識を活用することが求められます。

さて、ここで少し視点を変えて、自然界の例を見てみましょう。太陽について考えたことはありますか?太陽は、地球上のあらゆる生命に光と熱を与えています。植物は光合成を行い、動物はその恩恵を受けて生きています。太陽は、まさに「離為火」の象徴と言えるでしょう。

同じように、リーダーである皆さんも、周囲を明るく照らす存在になることが期待されています。ただし、注意が必要です。太陽が強すぎると、干ばつを引き起こします。同様に、リーダーが強引すぎると、周囲の人々を萎縮させてしまいます。適度な明るさと温かさを保つことが大切です。

ここで、私の経験を少しお話ししましょう。若い頃、私は知識だけを重視し、周囲への配慮が足りませんでした。結果、チームの雰囲気が悪くなり、業績も低下してしまいました。この失敗から、「明知」と「正しい道」のバランスの重要性を学んだのです。

では、具体的にどうすれば「離為火」の教えを実践できるでしょうか?

まず、常に学び続けることです。世界は刻々と変化しています。新しい技術、社会の動向、人々の価値観など、様々な分野の知識を吸収し続けることが大切です。例えば、1日30分の読書習慣をつけるのも良いでしょう。

次に、その知識を正しく使うことです。例えば、会社の利益だけでなく、社会貢献も考慮した決断をすることです。短期的には利益が減るかもしれませんが、長期的には信頼を得て、持続可能な成長につながるでしょう。

そして、自分の周りの人々を育てることです。知識や経験を独り占めするのではなく、積極的に共有しましょう。後輩の指導や、チーム内での勉強会の開催なども良い方法です。

古代中国では、「火」は南方を表すとされていました。南方は太陽が最も高く昇る方角で、明るさと活力の象徴だったのです。現代のビジネスでも、「南」という言葉がよく使われます。「売上が南向きだ」というのは、業績が上向きという意味です。これは、「離為火」の考え方が、私たちの言葉にも影響を与えている例と言えるでしょう。

さて、「離為火」の教えには、もう一つ重要な概念があります。それは「化成」です。これは、感化し育成するという意味です。実は、この言葉は多くの企業名に使われています。なぜでしょうか?

それは、企業の本質的な役割が、社会を良い方向に変えていくことだからです。製品やサービスを通じて人々の生活を豊かにし、従業員の成長を促し、地域社会に貢献する。これらすべてが「化成」の精神なのです。

例えば、ある食品メーカーが健康に配慮した商品を開発し、それが人々の食生活を改善したとしましょう。これは正に「化成」の実践です。また、従業員教育に力を入れ、個々人の能力を引き出す会社も、「化成」を実践していると言えるでしょう。

皆さんも、将来リーダーになったとき、この「化成」の精神を忘れないでください。自分の利益だけでなく、周囲の人々、そして社会全体をより良くすることを常に考えてほしいと思います。

ここで、一つ注意点があります。「離為火」の教えは、決して自分を高みに置いて人々を見下ろすということではありません。むしろ、周囲の人々と同じ目線に立ち、共に成長していくという姿勢が大切です。太陽は高い位置にありますが、その光は平等に地上のすべてのものに届きます。リーダーも同じように、公平で温かい態度で接することが求められるのです。

最後に、「離為火」の教えを日々の生活に取り入れる方法を考えてみましょう。

例えば、毎日の始まりに、「今日は誰かの人生を少しでも明るくできるだろうか」と自問してみるのはどうでしょうか。小さな親切や思いやりの行動が、周囲の人々の心を温めるかもしれません。

また、自分の専門分野以外の本を読んだり、異なる背景を持つ人々と交流したりすることも大切です。これにより、視野が広がり、より深い「明知」を得ることができるでしょう。

そして、定期的に自己反省の時間を持ちましょう。自分の言動が「正しい道」に沿っているか、周囲にポジティブな影響を与えているかを振り返ることが大切です。


参考出典

化成
「離」=火が二つ重なる離為火の説く徳は、明知をもって正しい道につき、太陽のように周囲を明るく照らすことである。
人間も明徳を修養して正しくあれば、風俗を感化し、広く社会を育成する者となれると教えている。
感化し育成するという意味の「化成」は、多くの企業名に用いられている。

易経一日一言/竹村亞希子

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