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まいにち易経_0726【自分の強みを活かす】碩果は食われず。[23䷖山地剥:上九]

上九。碩果不食。君子得輿。小人剝廬。

上九は、おおいなるこのみにしてくらわれず。君子は輿、小人ははくす。

人生の啓示:上九は剥卦の中で唯一の陽爻であり、上位に位置する。これは残された大きな果実のようなものである。「剥」の状況と戦うとき、上九は唯一の陽爻として試練を経て成功し、人民の支持を得る。その一方で小人は敗北する。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

「碩果不食」とは「大きな果実は食べられずに残る」という意味です。ここで言う「大きな果実」とは何でしょうか? それは、皆さんの中にある才能や能力、そして蓄積してきた経験や知恵のことを指しているのです。

この果実は、一度地に落ちることがあります。地に落ちるということは、失敗や挫折を経験することを意味しています。でも、それは終わりではありません。地に落ちることで、むしろ新たな芽が生じ、再び成長していくのです。つまり、皆さんがこれからリーダーとして成長していく中で、どんな困難や失敗があっても、それを乗り越える力が必ずあるということです。

大きな果実は一度地に落ちても、それによって新たな成長が生まれるのです。重要なのは、その果実を見つけ、育てることです。皆さんも、自分自身の中にある大きな可能性を信じ、育てていってほしいと思います。

社会や組織が混乱している時期があっても、本当に価値のあるものは簡単には失われません。むしろ、そういった困難な時期こそ、自分の真の価値が試される時なのです。

例えば、歴史上の偉人たちを思い浮かべてみてください。ガンジーやマンデラ、あるいは日本の福沢諭吉など、彼らは困難な時代に直面しても、自分の信念を曲げることなく、最後まで自分の役割を全うしました。彼らの思想や行動は、時代を超えて今なお多くの人々に影響を与え続けています。

長期的に見れば、真の価値を持つ人物が認められ、適切な地位や役割を得るということです。反対に、短期的な利益だけを追求する人は、最終的には自分の基盤さえも失ってしまうかもしれません。

ここで、ビジネスの世界から一つ例を挙げてみましょう。1990年代後半、アメリカのエンロン社は、一時は「アメリカで最も革新的な企業」と称賛されていました。しかし、短期的な利益を追求するあまり、不正会計を行っていたことが発覚し、最終的には破綻してしまいました。一方で、同じ時期に創業したAmazonは、長期的な視点で事業を展開し、現在では世界有数の企業に成長しています。

このように、リーダーとして成功するためには、短期的な利益だけでなく、長期的な視点を持つことが重要です。そして、自分の信念や価値観を大切にし、それを行動に移す勇気を持つことが必要なのです。

では、具体的に皆さんに何ができるでしょうか?

まず、自分自身の「碩果」、つまり自分の強みや価値を見つけ、それを磨き続けることです。それは専門的な知識かもしれませんし、人々をまとめる力かもしれません。あるいは、新しいアイデアを生み出す創造性かもしれません。どんな時代でも、本当の価値は必ず認められます。

次に、短期的な成果に惑わされず、長期的な視点を持つことです。日々の業務に追われる中で、「5年後、10年後の自分や組織はどうあるべきか」を考える時間を持つようにしてください。そして、その理想に向かって着実に歩みを進めていくことが大切です。

最後に、周りの人々との関係性を大切にすることです。「君子得輿」の「輿」は車を意味しますが、これは一人では動かすことができません。つまり、真のリーダーシップは、周りの人々の支持と協力があって初めて発揮できるのです。

皆さんは、これから様々な困難に直面するかもしれません。組織の中で意見が対立したり、自分の価値観が試されたりすることもあるでしょう。しかし、そんな時こそ、自分の中にある「碩果」、つまり本当の価値を思い出してください。そして、短期的な利益に惑わされることなく、長期的な視点を持ち続けてください。


参考出典

碩果せきか」とは、大きく実った果実のこと。
山地剥の卦は小人がはびこり、君子が追い落とされるような非道な時代を表すが、そんな混乱した中にあっても、大いなる果実は食い尽くされずに残っている。一度地に落ちるが、それによって芽が生じ、また発展するのである。
この果実は傑物や蓄財などと考えてもいい。そうした大きな原動力が残ってさえいれば、乱れた後の世の中は泰平の時代になっていくことを示している。

易経一日一言/竹村亞希子

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