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まいにち易経_0725【腐敗を正す】甲に先立つこと三日、甲に後るること三日。[18䷑山風蠱:卦辞]

先甲三日。後甲三日。

甲に先だつこと三日、甲におくるること三日。

甲乙丙丁戊己庚壬癸【甲】乙丙戊己庚辛壬癸……
「甲」は天干の始まりを示し、事の発端を引き出す。甲の三日前は「辛」で「新」と同じ意味を持ち、甲の三日後は「丁」で、注意を促す意味がある。甲の三日前は、物事が盛んになりすぎて崩壊しそうなときに、自ら新たにする精神を持ち、未然に防ぐべきことを示している。甲の三日後は、問題が発生したばかりの時点で、まだ深刻でないうちに観察し、適時に制御し救済することが必要であることを示している。

先甲三日。後甲三日。:この言葉は理解しにくい。歴代の易学者の解釈は極めて不統一で、六、七種の解釈があるが、最も正しいとされるのは虞翻《ぐほん》納甲説である。納甲の原理に基づき、十天干と八経卦の配置は乾が甲、壬を納め、坤が乙、癸を納め、艮が丙を納め、兌が丁を納め、坎が戊を納め、離が己を納め、震が庚を納め、巽が辛を納める。蛊卦は泰卦から変化したもので、泰の下卦は乾卦であり、甲を納める。蛊卦に変わった後、泰卦の初爻が蛊卦の上九爻に変わり、卦の上爻になる。つまり、蛊卦に変わった後、泰卦の初九爻が乾卦の前三爻から乾卦の後三爻の位置に上がるため、「先甲三日、後甲三日」と言われる。

象辞中の「先甲三日、後甲三日」の解釈は「終則有始」であり、これは事物の発展変化が循環する法則を明らかにするためのものである。繁栄の中に腐敗が生じ、腐敗が来れば衰退し、衰退の中で自強不息の努力を通じて新たな栄光を迎え、新たな栄光が繁栄をもたらし、また腐敗が生じる。つまり、事物には終わりがあり、新たな始まりがある。ある事物の終結は別の事物の始まりを意味する。

繁栄の中で腐敗が生じる場合、君王はどうすべきか?
象辞は「君子以振民育德」と言い、それが解決方法である。つまり、このような状況では、精神文明の建設を強化し、反腐敗と廉政を進めるべきである。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

まず、「蠱」という字についてお話ししましょう。この字は、皿の中に虫がわいている様子を表しています。皆さんは、美味しそうな料理が並んでいる皿を想像してみてください。そこに突然、虫がわいてきたらどう感じるでしょうか?きっと、嫌悪感や不快感を覚えるはずです。

これは、組織の中で起こる腐敗や混乱を表現しているのです。例えば、会社の中で不正が横行したり、チームの雰囲気が悪くなったりする状況を想像してみてください。そういった状況を、易経では「蠱」と表現しているのです。

さて、山風蠱の卦は、そのような腐敗や混乱をどのように正していくべきかを教えてくれています。これは、皆さんが将来リーダーになったときに、非常に重要になってくる知恵だと思います。

まず、「甲」という言葉が出てきます。これは、腐敗を一掃するタイミングを表しています。甲は十干の最初の文字で、新しい始まりを意味します。つまり、問題に対処するための新たなスタートを切る時期を表しているのです。

次に、「三日」という言葉が出てきます。ここで注意していただきたいのは、文字通り3日間という意味ではないということです。これは、問題解決のプロセスを3つの段階に分けて考えるという意味なのです。

では、その3つの段階とは何でしょうか?

  1. 原因を探り、熟考する段階

  2. 準備をする段階

  3. 決行後の将来を見据え、収拾までの手順を考える段階

これらの段階を丁寧に踏んでいくことが大切だと、山風蠱の卦は教えてくれています。

ここで、具体的な例を挙げて考えてみましょう。例えば、皆さんが入社した会社で、部署間の連携が上手くいっていないという問題があったとします。

まず、第一段階として原因を探り、熟考します。なぜ連携が上手くいっていないのか、各部署にヒアリングをしたり、過去の事例を調査したりして、問題の本質を把握します。

次に、第二段階として準備をします。部署間の連携を促進するための新しいシステムや仕組みを考案したり、必要なトレーニングプログラムを準備したりします。

そして、第三段階として決行後の将来を見据え、収拾までの手順を考えます。新しいシステムや仕組みを導入した後、どのようにフォローアップしていくか、問題が再発しないためにどのような対策を継続的に行っていくかなどを計画します。

このように、問題解決には段階を踏んで丁寧に取り組むことが大切なのです。

ここで、もう一つ重要なポイントがあります。それは、「腐敗は一朝一夕に起こったのではない」ということです。組織の問題は、ある日突然現れるわけではありません。長い時間をかけて少しずつ蓄積されていくものなのです。

例えば、会社の業績が悪化していく過程を考えてみましょう。最初は些細な効率の悪さや、小さなミスの積み重ねかもしれません。それが徐々に大きくなり、気づいたときには深刻な状況になっているということがよくあります。

だからこそ、問題を正すには「遠大な計画」が必要だと、山風蠱の卦は教えているのです。短期的な対策だけでなく、長期的な視点を持って取り組むことが大切なのです。

また、日々の小さな変化にも気を配ることも重要です。問題が大きくなる前に、早めに対処することができれば、より効果的に組織を健全に保つことができるでしょう。

例えば、定期的にチームメンバーとの1on1ミーティングを行い、些細な不満や改善点をヒアリングすることも良いでしょう。また、組織の状態を可視化するためのKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的にチェックすることも効果的です。

さらに、組織の文化を健全に保つことも重要です。オープンなコミュニケーションを奨励し、誠実さと透明性を重視する文化を醸成することで、問題が大きくなる前に早期発見・早期対応することができます。

最後に、自己啓発の重要性についても触れておきたいと思います。リーダーである皆さん自身が常に学び、成長し続けることが大切です。新しい管理手法やリーダーシップ理論を学んだり、他業界の成功事例を研究したりすることで、問題に対する新しい視点や解決策を得ることができるでしょう。

山風蠱の教えは、単に問題解決の方法を示しているだけではありません。それは、リーダーとしての姿勢、組織に対する責任、そして長期的な視野の重要性を教えてくれているのです。

皆さんが将来、どのような立場に就くかはわかりません。しかし、どのような場面でも、この山風蠱の教えは必ず役立つはずです。組織の健全性を保ち、よりよい社会を作っていくために、この教えを胸に刻んでいただきたいと思います。

そして、問題に直面したとき、決して焦らないでください。じっくりと腰を据えて取り組む勇気を持ってください。皆さんならきっとできると、私は信じています。


参考出典

山風蠱の「蠱」は、皿に虫がわく象形。組織の壊乱腐敗を意味している。山風蠱は、それを正す方法を説いている卦。
「甲」は腐敗を一掃する時。「三日」とあるが、三日に限るわけではない。腐敗を改めるには、まず原因を探り、熟考して準備をし、決行後の将来を見据えて、収拾までの手順を丁寧に踏まなければならない。
腐敗は一朝一夕に起こったのではない。正すには遠大な計画が必要なのである。

易経一日一言/竹村亞希子

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