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まいにち易経_0730【時・処・位~時の三要素】

易経が表す「時」とは、単なる時間の流れだけでなく、空間や状況も含む広い概念を指している。この三つの要素、つまり「(時間)」「(場所、環境、状況)」「(立場、社会的地位)」の三位一体が「時」を形成している。
この「時」を別の視点から見れば、「天」「地」「人」という三つの要素に対応している。「時」は天の動きと関連し、「処」は地の環境を表し、「位」は人の立場を示している。この三つの要素が調和することで、物事がうまく進むという考え方が易経にはある。
物事に対処する際には、現在という「時」において、どのような環境や状況(「処」)にあり、どのような立場(「位」)にあるのかを考えることが重要だ。この三つの要素をバランスよく理解し、それに基づいて行動することで、より良い結果を導き出すことができる。易経の教えは、時代や状況に応じた柔軟な対応と、調和を重んじる姿勢を説いている。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

易経が教えてくれる「時」という概念は、とても奥深いものです。単に時計の針が進むような時間だけでなく、私たちを取り巻くすべての状況を含んでいるのです。具体的に言えば、「時(時間)」「処(場所、環境、状況)」「位(立場、社会的地位)」という三つの要素が絡み合って、一つの「時」を形作っているのです。

これを理解するために、例えば学校生活を思い浮かべてみましょう。「時」は授業の時間割、「処」は教室や校庭、「位」は生徒や先生という立場です。これらが上手く調和していると、充実した学校生活が送れるでしょう。同じように、社会に出てからも、この三つの要素のバランスを意識することが大切になってきます。

面白いことに、この考え方は古代中国の「天地人」という思想とも通じています。「時」は天の動き、「処」は地の環境、「位」は人の立場に対応しているのです。例えば、農業を営む人にとって、天候(天)、土地の状態(地)、そして自分の技術や経験(人)が調和することで、豊かな実りがもたらされるのです。

この「時・処・位」の考え方は、ビジネスの世界でも非常に重要です。私が経営者だった頃、新製品を発表する際には常にこの三つの要素を考慮していました。「時」は市場のタイミング、「処」は販売地域や流通経路、「位」は自社の業界での立ち位置です。これらを慎重に検討することで、成功の確率を高めることができたのです。

易経の考え方は、実は日本の茶道にも影響を与えています。「一期一会」という言葉をご存知でしょうか。これは、一つの時間、一つの出会いを大切にするという意味ですが、まさに易経の「時」の概念と通じるものがあります。茶会という「時」に、茶室という「処」で、亭主と客という「位」が調和することで、素晴らしい体験が生まれるのです。

さて、これらの教えを現代の私たちの生活に当てはめるとどうなるでしょうか。例えば、就職活動を考えてみましょう。「時」は景気動向や採用時期、「処」は志望する業界や企業の状況、「位」は自分のスキルや経験になります。これらを総合的に判断し、自分にとってベストなタイミングと場所を選ぶことが成功への近道となるでしょう。

また、人間関係においても、この考え方は非常に有効です。友人や恋人との関係を深めるとき、「時」はお互いの気持ちや状況が整っているか、「処」は二人を取り巻く環境は良好か、「位」はお互いの立場や役割はバランスが取れているか、といったことを意識することで、より良い関係を築くことができるでしょう。

ここで、もう一つ興味深い例え話をしましょう。易経の教えは、実はジャズ音楽にも通じるものがあるのです。ジャズの即興演奏では、演奏者は「時」(テンポやリズム)、「処」(演奏会場の雰囲気)、「位」(バンド内での役割)を瞬時に判断し、調和させながら素晴らしい音楽を生み出します。これは、まさに易経が説く「時・処・位」のバランスを実践しているといえるでしょう。

易経の教えは、時代や状況に応じた柔軟な対応と、調和を重んじる姿勢を説いています。これは、変化の激しい現代社会を生きる私たちにとって、非常に重要な指針となります。例えば、テクノロジーの急速な進歩により、私たちの仕事や生活は日々変化しています。このような状況下では、新しい技術や環境に柔軟に適応する能力(「時」への対応)、自分の置かれた状況を正確に把握する洞察力(「処」の理解)、そして自分の役割や責任を認識する自覚(「位」の認識)が求められるのです。

ここで、皆さんに考えていただきたいことがあります。今、あなたはどのような「時」「処」「位」にいるでしょうか。そして、それらはバランスが取れているでしょうか。例えば、学生の皆さんなら、「時」は学生生活という貴重な時期、「処」は学びの場である学校や地域社会、「位」は学生という立場になるでしょう。これらを意識することで、より充実した学生生活を送ることができるはずです。

また、将来のリーダーとして、チームや組織を率いる立場になったとき、この「時・処・位」の考え方は非常に役立つでしょう。リーダーは常に「時」(現在の状況や将来の展望)、「処」(組織の環境や市場の動向)、「位」(自身の立場や組織の位置づけ)を把握し、それらのバランスを取りながら決断を下していく必要があります。

ここで、リーダーシップに関するちょっとした豆知識をお話しします。古代中国の名将、孫子は「天時地利人和」という言葉を残しています。これは「天の時を得、地の利を得、人の和を得る」という意味で、まさに易経の「時・処・位」の考え方と一致します。つまり、優れたリーダーは、時勢を見極め(時)、環境を活用し(処)、人々の協力を得る(位)ことができる人なのです。

最後に、皆さんにお伝えしたいことがあります。易経の教えは、決して難しいものではありません。日々の生活の中で、「今」という時間、「ここ」という場所、そして「自分」という存在を意識し、それらのバランスを取ろうと努めることから始まるのです。例えば、友人との会話でも、今がどんな状況か(時)、どんな場所にいるか(処)、お互いがどんな立場か(位)を意識することで、より良いコミュニケーションが取れるようになるでしょう。

また、この「時・処・位」の考え方は、自己成長にも大いに役立ちます。新しいスキルを身につけるとき、それが求められている時期なのか(時)、学ぶ環境は整っているか(処)、自分の現在の立場でそのスキルは必要か(位)を考えることで、より効果的な学習が可能になります。

易経の教えは、数千年の時を経て、今なお私たちに多くの示唆を与えてくれます。それは、人生という長い旅路において、常に自分を取り巻く状況を冷静に見つめ、柔軟に対応していく姿勢の大切さを教えてくれるのです。

皆さん、これからの人生で、様々な選択や決断の場面に直面することでしょう。そんなとき、ぜひこの「時・処・位」のバランスを意識してみてください。それは、より良い決断への道しるべとなるはずです。

最後に、易経の教えは決して固定的なものではないということを強調したいと思います。それは、変化し続ける世界に柔軟に対応するための智慧なのです。ですから、皆さんも自分なりの解釈や応用を恐れずに、この考え方を活用していってほしいと思います。

私の話は以上です。皆さんの前途に、幸多きことを祈っています。ありがとうございました。


参考出典

易経の表す「時」とは、時間だけでなく空間をもいう。
・時(時間)
・処(場、環境、状況)
・位(立場、社会的地位)
この三位一体の時を表している。
いいかえれば、時は「天」であり、処は「地」であり、位は「人」にあたる。
したがって、物事の対処にあたっては、今という時、環境、立場にあって、どうするべきかを考えなくてはならない。

易経一日一言/竹村亞希子

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