今夜も白い壁じゃなくて、顔を見て眠りにつきたかった
この世でいちばん哀しい光景は、眠りにつく前に見る目の前の白い壁だ。
桜の季節に初めて一人暮らしをした部屋は、お世辞にも広いとは言えないワンルーム。バストイレ別ということだけが自慢な、けれどすきなものだけを集めた小さなそのお城は、雪の降る頃にいつしか二人暮らしに変わっていた。
狭い、ということは近い、ということで。
気配につつまれた濃密な8.5畳は、どこにいてもふたりがいて、どこにもいけないほどふたりしかいなかった。
炊くお米の量が増えて、洗濯の回数が増えて、帰ったときに